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映画・演劇のレビュー

咲くやこの花高校『おとなも子供もかいだんとゼリーを』

2010-07-29 22:08:35 | 演劇
 この淡々としたタッチは好きだけどストーリーにまるで仕掛けが無くてガッカリする。7つのシーンからなる70分ほどの芝居だ。リビングと姉のバイト先である喫茶店のシーンが交互に描かれる。ワンシーンは10分。几帳面に繰り返される。ドラマにメリハリをつけないのは確信犯的行為で、その心意気は確かに伝わる。だが、あまりにスタイリッシュになりすぎて、そこだけが突出して、肝心のハートが伝わらない。

 姉と弟の2人きりの生活。毎朝毎晩きちんと挨拶を交わし、規律のある生活を送るのが彼らのルール。そうすることで、自分たちの生活と、自分たちの心を守っている。それはいいことだ、と思う。しかし、それだけではいかないこともある。

 大人になりきれない姉。大人として振る舞おうと無理する弟。母が帰宅する日を待つ2人での数日間が描かれる。 だが、何らかの事情が生じて母の帰宅が数日遅れることになる。そんなささいなことで感情を抑えきれなくなる弟。

 大人の階段を少しずつ上っていくこと。ただそれだけのことが、この芝居の中にはきちんと描かれてある。抑制も効いている。役者たちも上手い。それだけに、そこからこぼれ落ちてくる感情が、描ききれないのは惜しい。

 芝居自身が上手すぎることが、結果的にこの作品の欠陥になっているなんて、なんだか納得がいかない話だ。だが、それが事実である以上、しかたないと思う。演出も生徒に任せたならどうか。そうすることで、作品は思いもしない方向に向かったかもしれない。綻びが出来、そこから本来ここに描かれるべきだったものが見えてきたかもしれない。


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