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映画・演劇のレビュー

信愛『おもちゃ箱革命2010』、近大附属『おもいで』

2010-07-29 22:06:13 | 演劇
 これはもうひとつの『トイストーリー』だ。顧みられなくなったおもちゃが、それでも彼らとの絆を断ちがたく、彼らと関わりを持とうとする。おもちゃの孤独のほうに話をシフトさせているのがいい。
 15年程前に上演された台本を、今もう一度取り上げ、新生信愛演劇部は中学1年生2名、3年1名、高校生は1名というキャストで、HPFに挑む。
 これはたぶん今回の23作品の中で一番小さな作品である。そして、その小ささがここではとても大事だ。ここで言う小ささとは作品のスケールの問題だけではない。描く題材と作品の合致。自分たちの身の丈にあったものを取り上げること。自分にとって切実な問題を自分たちの理解出来る範囲で考えるための芝居。そういう意味での小ささである。
 この小さな世界をしっかりみつめて、彼女たちは、自分たちの想いをしっかり届ける。その心意気に感動した。まだほんの数カ月前まで小学生だった部員たちが一生懸命に演じる。顧みられることのなくなったおもちゃの孤独と自己主張。単純なお話をきちんと見つめる。その姿勢がすばらしい。


 劇団文芸部というのが、いい。この芝居の限界をよく示している。台本がまずあって、そこに描いたイメージを芝居は越えられない。演出不在の劇となった。これがこの集団の特徴なのか。ストーリーの仕掛けだけで見せ方になんの工夫もない。40分の中編2本立。人の今の思いと記憶の中にある思い出とが、交錯し、死んでしまったものと、生きているものとが、今を乗り越えていこうとする姿が描かれる。この連作はまるで同じ骨格を持つ。それを2本並べたことは興味深い。題材へのアプローチはなかなか興味深いだけに惜しい。

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