『マジカル・ガール』で第62回サン・セバスチャン国際映画祭グランプリ&監督賞を受賞した(という)スペインの鬼才カルロス・ベルムト監督最新作。相変わらず日本をリスペクトしてくれる。我がごとではないのに、なんだか気恥ずかしい。
主人公はゲームデザイナーのフリアン。隣人の少年を火事から救う。お話はそこから始まる。
だが、何を描こうとしているのか、なかなか明確にならない。もちろん少年への愛(ロリコン)を包み隠して生きること、自らの内にある怪物から逃れるためにひとりの女性を好きになること、とはっきりしているが、それを求心的には描かない。曖昧なまま描く。
彼は自分の心を押さえ込み、普通の男として無意識に生きようとする。だが、抑えきれない。ラストの自殺は衝撃的だ。最終的には少年への想いをいかに描くのか、とかなりドキドキして見ていたから、まさかの展開に唖然。しかも未遂に終わり寝たきりになる、というオチも凄い。
彼の毎日を淡々と描き、わかりやすいストーリーを追わないのもいい。いつまでも話の先が読めない。何も起きないまま終わってもおかしくない展開なのだ。なんとも不思議な味わいの映画だった。