チラシのイメージではもっとエロチックな芝居を想像させるのだが、まさかのドタバタで笑わせてもらった。とても楽しい。「女の情念が見え隠れするサスペンス人間芝居」とも書かれてあったのでシリアスでスリリング、ドロドロした濃厚なドラマだと思うではないか。でも、この秘かな裏切りがなんだか心地よく、舞台裏の人情劇を堪能させてもらえた。
6人の女たちが繰り広げる楽屋での騒動。やってこないこのキャバレー出身の人気女優を待ちながら、彼女の穴埋めに奔走する歌手やダンサーたち、そして能天気なホールスタッフ。彼女たちの姿を楽屋での定点観測で描く。これは清水邦夫の『楽屋』へのオマージュなのか、なんて思ったけど、どうだろうか。でも、重くはない。軽くて楽しい作品。今ではもう遠い昔のお話。レビュー華やかなりし頃。スターを夢見る女たち。でも、現実は厳しく、挫折する仲間もいる。夢破れてここを去っていき、やがてはここにいたことも忘れる(かもしれない)。でも、彼女たちは今はまだここにいる。そんなある日が描かれる。
それをこんなにもサラリとあっけらかんと描くのだ。思い入れたっぷりで、感傷的に描くのではない。演出の奈可川浩三は、彼女たちの秘めた想いや悲しみを表だっては描かない。でも、ちゃんとそんな想いは見え隠れする。そのへんの匙加減は絶妙だ。ちゃんと「ドタバタ」として最後まで描くのもいい。オチとなるエピソード(寝坊だった!)のたわいなさ。ふつうならここまで引っ張ってそれはないだろ、と思うところだが、敢えてそこに落ち着かせる。確信犯的だ。そこまでの演出に自信がなくてはこういうラストは作れない。(台本は山村菜月)1時間45分、彼女たちの奮闘を楽しめ、そして少しだけ切ない気分にさせられる。