習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『ウエストゲート№6』(『6番出口』)

2009-10-09 22:10:12 | 映画
 台北の若者が集う繁華街、西門町を舞台に、4人の男女を中心にした青春群像映画。本国では大ヒットを記録したとてもかわいいドキュメンタリー『ジャンプ!ボーイズ』(日本では残念ながらあまり入らなかった)の新鋭、リン・ユゥシェンが初めて劇映画に挑戦した作品。

 今回もドキュメンタリータッチの部分はなかなかおもしろいのだが、本題であるドラマ自体はなんとも言い難い。要するに、前半のただ楽しく過ごすだけのたわいない時間を描いた部分は悪くないのだが、後半、事件の本筋に入ると、もたもたしてあまり乗れないということだ。

 だが、それは僕が言葉がまるでわからないから、お話自体をきちんと理解できてないからかもしれない。日本語字幕がない映画はつらい。映像だけでもだいたいの話は摑めるがさすがに微妙なニュアンスまでもはわからない。ただし、ここまでしか僕を引きつけないのは、やはり映画自体に思ったほどの力がないからだろう。凡庸なイメージで、風俗をさらりと撫でただけという印象だ。

 リン監督はこの素材を得てここで一体何を描こうとしたのか。そのへんがまるで見えてこない。台北で暮らす若者たちが何を思い何を感じているのか、そんなものはここからは一切見えない。ラブストーリーとしても中途半端だ。『ジャンプ・ボーイズ』の時も、題材はおもしろいと思ったが、それをどう見せたいのかが明確ではなかったから、子どもたちがかわいいし、映画自体は好きだが、正直言うといまいち乗り切れなかった。彼には描きたいものがないのか、なんて思うくらいに作者の主張がまるで感じられないのだ。作家があまりに出しゃばりうるさい映画はうんざりだが、ここまで捕らえどころがないのも、なんだか困る。

 風俗の表面をなぞるためだけで、この映画を撮ったわけではあるまい。生ぬるい空間で自由なふりして生きている若者たちの倦怠感や焦燥感を描いたりしてもよかったのではないか?

 女の子たちのバックボーンはそれなりに描かれるが、男たちはまるで何もない。敢えて背景を描かないことで伝えたいことがあるというのならいいが、ただ単なる杜撰にしか見えない。せっかく時間を割いて見たのに、これではがっかりだ。

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