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映画・演劇のレビュー

吉田篤弘『つむじ風食堂の夜』

2015-11-26 20:38:50 | その他

2002年の作品だ。月舟町3部作の第1作。正直言うと、これはそれほど、面白くはない。これから読み始めていたらなら、こんなにもハマらなかったかもしれない。だから、順番はよかったかも。最初は小川洋子との共作で彼のことを知った。クラフト・エヴィング商會、として。そのあと、『ソラシド』を読んで、ハマった。好きだな、と思った。こういうこだわり。どうでもいいことなのだけど。

『それからはスープのことばかり考えて暮らした』を読んで、これが決定的。なんて素敵な世界を作るのだろうか、と一気にファンになってしまった。

先日の『つむじ風食堂と僕』もよかったけど、あれはあくまでもスピンオフだ。オオイさんの見た世界を描く『それからはスープのことばかり考えて暮らした』が素晴らしい。あれと、較べれば、この1作目はまだ発展途上、って感じ。先生と彼の周囲の人たちの群像劇スタイルの本作は、インパクトは弱い。特定の主人公を設定し、そこから描く『スープ』(もうややこしいから、これで統一)と違い、本作の主人公である先生は狂言回しでしかない。この世界を作ることのほうが大事で、吉田篤弘はここではまだ、種まきをしている状態。でも、確かに、種は播いた。それでいい。でも、ここには「つむじ風食堂」のイメージしかない。仕方ない。その幻のような食堂はなんだか夢の中のようで淡い。

月舟町ではなく、そのとなり町を舞台にした『スープ』は、その距離感がいいのだ。あそこでも、つむじ風食堂や、月舟シネマは、なんだかぼんやりしていて、でも、そんなところがよかったのだろう。リツくんの存在は大きい。彼を主人公にした『つむじ風食堂と僕』がよかったのも、彼故。つぎは3部作の完結編を読むけど、いつになることやら。


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