昨年『サマーフィリング』を見てこの監督(ミカエル・アース)のファンになった。あの映画はとてもよかった。大切な人の死という現実をどう受け止めて、そこからどう生きていくのかが3つの夏、3つの場所で描かれる。彼があの作品の後に手掛けた本作もまた、同じ話で、2作連続同じテーマで2本を作ったのだ。こういう内容だから昨年日本では2本セットで劇場公開されたみたいだ。ようやく、こちらの映画も見ることができてうれしい。『サマーフィリング』には及ばないけど、これもとてもいい映画だった。
映画の前半は、姉とその娘と僕の日々のスケッチだ。そして、突然の死。あの衝撃的な光景を目の当たりにするシーンで、僕たち観客もまた、彼と同じくらいのショックを受けることになる。そんなことがあり得るなんて、想像もできない。だけど、それは目の前で起きていた。自転車で公園に駆けつけて、彼がその光景を目撃する。この静かな映画の中で、あの特別な静けさは突出している。こんな悪夢があるのだ。
映画は、姉の死を受け入れられないまま、とまどい生きる主人公と彼の周辺の人たちの姿を丁寧に描いた。この映画の原題が『アマンダ』だから、特にタイトルロールであるアマンダ(姉の娘)との関係を中心にしたのは当然なのだけど、2人に集約させないで、とまどいの連鎖はみんなに波及する。主人公の主観ではなく、客観描写に終始したのがいい。映画を故意にドラマチックにはしない。
悲しみは静かに彼らの心に浸透していく。淡々とした描写の連鎖のなかから彼らの抱える傷みは確かなものとして伝わる。悲しみに耐えきれない弱さを乗り越えていく、という定番ではない。彼らはこの悲しみにいつまでも打ちひしがれたままだ。だけど、いつかそれを乗り越えていく。そう、彼らは生きてるからだ。そんなあたりまえのことがこんなにも愛おしい。