山田太一の『異人たちとの夏』の2度目の映画化。大林宣彦のあの傑作映画に挑むのは『荒野にて』『さざなみ』のアンドリュー・ヘイ。果たして先日亡くなっている山田太一はこの映画を見たのだろうか。きっと見ていない。もちろん大林宣彦監督はこの映画を見ることは出来ない。日本情緒漂う作品がイギリス映画として蘇る。
主人公の孤独が突き詰められて描かれる。なんと登場人物は、ほぼ4人だけ。しかも主人公以外はみんな死んでいる。彼は12歳の頃、交通事故で両親を亡くした。彼はある日死んだ両親と30年以上の歳月を経て再会する。昔住んでいた家を訪れると、そこにはあの頃のままの両親がいた。そんなあり得ないことを受け入れる。
彼が暮らすマンションには何故か誰も住んでいない。唯一の住人は6階の男。最初は夜中にウイスキー瓶を持っていきなり訪ねてきた彼を拒絶したが、やがて付き合うことになる。(ふたりは同性愛者だ)
彼は生きているけど、現実世界にはもういない。だから死者に会える。この世とあの世の間のような世界を彷徨う。
とても寂しい映画だ。彼の抱える孤独とひたすら向き合う1時間45分。