『落下の王国』

　世界２４カ国。１３の世界遺産をロケして作り上げた壮大なロマン。夢と冒険の世界を現実の風景を通して作り上げていく。今の時代は何でもＣＧによって視覚化出来てしまうけれど、この映画は現実ではない空想の世界を現実の建物や風景をそのまま使って、見たこともない驚きの世界として見せてくれる。

　この広い世界にはまだまだ僕たちの知らないような美しい人工の風景（建造物のことです）がある。その壮大なランドスケープを男が紡ぎ出した物語によって少女が頭のなかで想像した風景として見せていく。

　１９１５年、映画がまだ黎明期だった頃。スタントマンとして活躍していた青年が事故で再起不能となる。ベッドで横たわる彼の元に、リンゴ（オレンジだったっけ？）の木から落ちて右手を骨折した少女がやってくる。彼は少女に作り話をする。彼女は夢中でその話を聞く。５人の勇者たちの冒険の旅である！途中からはお話を聞いていたはずの少女までもがドラマの中に登場する。
　

　とてもシンプルな映画である。それをとんでもないスケールで描いていく。単純にその壮大な風景に驚きながら見てるだけでいい。ターセム監督が望んだのはそういうことなのだ。ひねりがなさ過ぎて少し単調で眠くなるけど、スクリーンいっぱいに広がるパノラマを夢見心地で見つめているだけで気持ちがいい。