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映画・演劇のレビュー

『ジゴロ・イン・ニューヨーク』

2015-07-26 21:31:31 | 映画
これはまるでウディ・アレンの映画のような作品だ。でも、今のアレンには、こういうしっとりとしたラブストーリーは撮れそうにない。そこで、ジョン・タトゥーロの登場である。アレン映画のテイストを引き継ぎ、ちゃんと本家である彼を担ぎ出し、ウデイ・アレン自身のナレーションで綴る。アレンがよくやるパターンを踏襲する。でも、これは断じてものマネではない。アレン映画へのオマージュだ。

アレン・テイストを生かして、おしゃれでせつない街歩きの映画を作る。狂言回しのアレンの存在がこの映画をウディ・アレン映画もどきにする。アレンは自分の映画のように振る舞うけど、これはタトゥーロの世界だ。

彼は自分で主人公を演じながら、あまり自己主張をしない。アレンに踊らされるまま、に見える。だが、そうではない。この完璧に作られたアレン映画の世界で、自分が見せたかったものを見せていく。この海千山千の新人監督はなかなかしたたかである。

ひとりの寂しい女と、心が空っぽの男。出会いと別れを90分の小さな映画としてまとめる。そういう所も昔ながらのアレン映画だ。小さくコンパクト。さりげなく、でも、ほんのちょっと、幸せな気分。

ユダヤ人コミュニティーのなんだかとても鬱陶しい戒律。そんな世界でひそやかに生きる人々。アーミッシュの村を描いた『刑事ジョン・ブック 目撃者』を思い出した。夫を失ってから誰にも身体を触れられたことのなかった女。(夫がいた頃だって、彼は彼女に触れなかった)彼は優しく彼女に触れる。彼女は涙を流す。心を少しずつ開いていく。怯えさせず、接する。ああ、こういうジゴロならいいかも、と思わせる。これはちょっとした都会のお伽ばなし。いい気持にさせてくれる。

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