「えっ、これでおしまいなの?」 思わずそう声を上げそうになった。「何も話ないじゃん!」と。
メキシコからアメリカに密入国する男女が、わけのわからないハンター(メキシコからの密入国者を嫌っている博愛主義者)に追い回されて、殺されていく。ただただ逃げる。それを88分、問答無用で描く。(確かに、この内容なら90分切れる)
こういう映画は嫌いではないけど、あまりに何もなさ過ぎて、驚くしかない。そこが狙いなんだよ、と言われたなら、返す言葉はない。でも、それだけでは映画にならない。それだけで映画にしようとするのなら、そこにもっと「何か」が必要なのだ。何も描かないで目の前の事実だけ、それが映画の力になったらいいのだが、そこまでいかない。
監督のホナス・キュアロンは『ゼロ・グラビティ』の監督アルフォンソ・キュアロンの息子で、これがデビュー作。悪くはないけど、これではB級アクション映画と言われても仕方ない。