「落下する飛行船とんでもなく上空で故障したので、地面に到着するまで、あと7日間」という基本設定がまずありえない。しかも、故障が絶対に直らないというのも、なんだかなぁ、で、このあまりにむちゃくちゃな前提を受け入れないことには、話は先に進まない。飛行船は大気圏外まで上昇しません。(たぶん) ちゃんとチラシを読んでなかったから、最初は宇宙船の中の話だと思っていた。(それでもおかしいけど。)
どうしてここまでバカバカしい設定にしたのだろうか。笑えるけど、「ないわぁ」と思うと、もう、ついていけないから、かなり微妙。
しかも、ラストはオチのない話で、落ちる直前で暗転して終わる。そこがオチですか、と突っ込む。
舞台となる傾いだリビングルームは凄い。(舞台美術は柴田隆弘)空間自体で「落下中」という事実を体現する。八百屋舞台はよくあるけど、こんなふうに正面に向かって、斜めになった空間は珍しい。このリビングルームには4カ所の出入り口があり、さらには窓もある。開かれた場所であると同時に限定された空間にあるということも象徴する。空間自体が不安感のシンボルにもなる。
ゆっくりと死に向かっていく恐怖という設定をいかに生かすかがこの芝居の生命線だろう。それをパニックから冷静さへと、そして再びパニックへと、巧みに揺さぶりながら見せていく手綱裁きは見事。そこに生々しいセックスの問題もしっかり取り込んで危機感を募らせる。確かに上手い芝居なのだ。
ラストで6人がレモンキャンディを食べることで、ラスト12秒を引き延ばし、時間の経過をゆっくりにしていくことの先に、何を提示するのか、ドキドキして待ったのだが、オチはないまま終わる。この終わらせ方は逃げのようでもあるが、悪くはない。オチのないオチになることで、彼らを突き放す。とてもスタイリッシュだ。
だが、わかっているけど、やはり物足りないことも事実なのだ。なんだかはぐらかされた気分になる。そこは惜しい、としかいいようがない。