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映画・演劇のレビュー

アートプロジェクト集団「鞦韆舘」 presents『S/Mオペラ 上海的処女篇』

2014-06-24 22:03:06 | 演劇
昨年10月、試演会がなされた。今回は満を持しての完全版としての上演となる。『O嬢の物語』を題材にしてレトルト内閣の三名刺繍が自由翻案した。1920年代上海租界を舞台にし、その魔窟で娼婦として生きていくことになる女を見つめる語り部となる女(ナレーション部分だけではなく、登場人物のほとんどのセリフも、彼女の口から発せられる!)の視点から見た幻の魔都上海の幻想。寺山修司の映画『上海異人娼館』の世界を自由奔放にイメージの膨らむまま、換骨奪胎し、自分の世界へと作り変えた。演出の佐藤香聲さんは寺山の無念をこの作品で晴らす。

さまざまなパフォーマーを連れてきて、彼女たちに舞台で自由にそれぞれのテクニックを披露させながら、それを1本の作品に昇華させていく手腕は、確かなものだ。佐藤さんは自由自在にこの舞台で遊ばせる。それが結果的には、この作品の完成度を高めることになる。

今回は前回以上にストーリーラインを明確にして、でも、その枠に押し込めることはしない。どこまでも自由に見える。だが、全体の構成は見事だ。この魔窟にいざなわれ、その麻薬のような空間で骨抜きにされる。まるで永遠に続く幻に去勢されてしまうようだ。「オブジェ化される身体とサイケデリックな言葉で、観客は至福の奴隷になる」というチラシの一文をそのまま引用してしまう。(情けないけど、この1文がこの作品の特質を見事捉えてあるからだ。実にうまく的を射ている。なんだか悔しい)

見ながら、やられた、と思った。計算尽くされた圧倒的なビジュアルと、洪水のような生演奏による音楽。耽美的な幻想の世界を、この狭い空間に(会場はキャパ50程の「藝術中心カナリア条約」)現出させる。全体のバランスが見事で、100分に凝縮されたこの悪夢の世界に魅了された。これは傑作だ。

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