ふたりの少女が偶然出会う。一人は施設にいる自閉症気味の少女ニナ。もう1人は窃盗をしながらフラフラ生きるトニ。ベルリンの町を浮遊する2人の2日間のスケッチが淡々と描かれる。特別な思い入れもなく、ドキュメンタリーのような距離感がある。
そこに10年以上前に当時3歳だった娘連れ去られた女性が絡んでくる。この女は心を病んでしまい、今もずっと失った娘を探し続けている。フランスからここにやって来た彼女は、ニナを自分の娘だと言う。足の傷、背中のあざ、すべて言い当てる。トニと離れ1人になり、行き場を失くしたニナは、ほんの少し彼女に心を開く。しかし、その時は拒絶される。
映画はどこまでが現実でどこからが幻影なのかを、はっきりさせない。女はニナに声をかけながら本当は彼女を自分の娘とは思っていない。ニナは女が自分をどこかに連れて行ってくれるのではないかと期待するが現実にはそんな夢のようなことは生じない。そんな二人とは対照的にトニはただある現実の中でしっつかり生きる。自分の殻に閉じこもる女、自分を囲む世界から逃げ出したい少女、現実をありのままに受け止めるしかないと開き直っているもう1人の少女。3人がベルリンの町ですれ違って見た幻影のような短い時間が、白昼夢のように描かれる。
こういう映画は最近全然お目にかかれない。こんなにも映画は公開されているのに実は、こういう地味な映画はDVDにもならない。京都映画祭になぜこの作品が入っていたかよくわからないが、偶然とはいえ、見れてよかった。