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映画・演劇のレビュー

『仮面ライダー BLACK SUN』

2022-10-30 11:29:10 | 映画

白石和彌監督による配信用オリジナルドラマ。アマゾン・プライム・ビデオの新作だ。全10話からなる。1話が40分から50分なのでトータル7時間以上の長尺である。『仮面ライダー BLACK』のリメイクではなくあの作品へのリスペクト作品だった、はずなのだが、まさかこんな作品になっているなんて、思いもしなかった。期待が大きすぎたこともあるが、あまりの不出来に唖然とした。大人向けの本格派映画として作られたはずなのに、しかも手加減しないし暴力描写も辞さないR18+である。白石節全開の渾身のアクション大作だと誰もが思ったはずなのだ。この秋一番の楽しみだった。それだけに、このつまらなさは犯罪級だ。仮面ライダーBLACK SUN(西島秀俊)と仮面ライダーSHADOWMOON(中村倫也)の対決という『仮面ライダー BLACK』の基本コンセプトがまるで生きてない。

まず子供が出てくるのが解せない。どうして子供がお話の一翼を担うのか、わけがわからない。お子様向けではないと標榜したのではないのか。14歳の少女を南光太郎(西島秀俊)が守るなんていうお話なのだ。それってお子様ランチの定番ですよね。それからショッカーが出てこなし、世界征服の野望も描かれない。わけのわからないヘイトクライムから話が始まるし。怪人の人権を守れ、とかいうデモと右翼団体によるヘイト。それがなんだかしょぼい感じで描かれていて、最初から乗り切れない。さらには国連で14歳の日本人少女(先に書いた光太郎が守ることになる女の子)がスピーチをするエピソードも、なんだか取って付けたような感じで嘘くさい。そう言えば冒頭の2人の少年が改造人間にされる描写もしょぼくて驚いた。

この先どんな展開になるのか、まるで読めないままお話が始まるのだが、それはいい意味での「お話」ではなく悪い意味だ。もう悪夢としかいいようのようなお話が始まる。1972年学生運動が下火になる時間。怪人の人権擁護のため戦ってきた学生たちが総理大臣の孫を誘拐して山の中に監禁する。もうひとつの「あさま山荘」を思わせるこの過去のエピソードと50年後の今が交互に描かれていくのだが、まるでそのお話に説得力がない。

世界観の構築が安易で杜撰すぎるから、お話にまるで乗れないし、いろんなところが噴飯ものだ。敵があまりにしょぼいし、だいたい肝心の人間と怪人との関係が描けてない。怪人たちが暮らすエリアもなんで朝鮮人たちの市場なのかもわからない。在日朝鮮人と怪人をオーバーラップさせて描いているようだが、いくら何でもそれはないのではないか。

光太郎が暮らす廃バスを改造した住処もあんなの普通ならすぐに役所から人が来て撤去されるのではないか。悪者たちのアジトも同様だ。いろんなところがまるでいい加減で突っ込みどころ満載。先日の『鋼の錬金術師』レベルなのだ。期待が大きすぎたという問題ではなく、この作品の出来の悪さが一番の問題点で、どうしてこれだけのスタッフ、キャストが集結してこんなことになったのか、まるで解せない。

実はまだ7話までしか見ていないのだが、あまりのことでショックだったので、最後まで見る前だけどここまで書いてしまった。今日残りの3話を見て改めて書く予定。


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