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映画・演劇のレビュー

『リトル・フォレスト 夏・秋』

2015-03-31 22:11:07 | 映画
この2月に公開された『冬・春』に先立つ『夏・秋』をようやくDVDで見た。批評も芳しくなく、正直言うと、あまり期待はしなかったこともあって、かもしれないけど、意外な面白さに驚く。何でも、自分の目で見なくてはわからない。特に世の中に流布するつまらない批評は極力避けて、信じない方がいい。(というか、僕はキネマ旬報くらいしか読んでないけど、そこに書かれてある批評がつまらない、という話)

これもまた原作はマンガらしい。今の日本映画は目ぼしいものは、そのほとんどがマンガ原作ではないか、という勢い。しかも、そのジャンルがまた実に幅広い。まぁ、監督が『重力ピエロ』『Laundry ランドリー』の森淳一なのだから、僕は見たかったし、きっと期待できるとは思ったけど。

主人公は橋本愛演じるいち子。一度は町に出て生活したけど、今では村に戻ってきて、畑や田圃を耕し、たったひとりで暮らす。彼女の住む「小森」(リトルフォレルト!)は東北の田舎の村で、周囲には商店はもちろんコンビニもない。だいたい家すらない。隣の家まで行くのにも、かなりかかる。

映画はそんな彼女の生活を淡々と描いていくだけ。登場人物は、(ほぼ)彼女ひとり。ひとりだから、会話もない。モノローグがずっと流れる。農作業をしている姿を延々と見せる。なのに、それが心地よいし、退屈もしない。おもしろい。描かれていく短いエピソードは、いずれも食を巡るお話。彼女が、自分が作った野菜や、野山で取ってきた食材を使って、いろんな料理を作る姿をただスケッチしていくのだ。

「食べる」「生きる」がテーマだ。それをことさら強調しているわけではない。あくまでもさりげなく、自然体。そんな彼女を見ているだけで、幸せになれる。お話はない。夏、秋の2章仕立てで、それぞれは独立した1時間ほどの中編映画になっている。だからこれはいまどき懐かしい2本立映画なのだ。四季を描くことで、この映画がたどりつくのはどこか。それも楽しみだが、きっとこの映画はそんなことお構いなし、だろう。夏の次が秋だったから、この2本。ということは、その後が冬だから、そして春が来るし、というくらいの安易なノリ。

でも、そのあたりまえがこんなにも愛おしい。彼女に何があったのか。ここで彼女は何を見つけるのか。そんなことにはあまり期待せずに、ただ、小森での生活を見届けたい。

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