予測不可能な展開に唖然とする。これは幻なのか、と何度も思うけど、そうじゃないみたいだ。安易になんでも幻にしてごまかす映画とは違う。説明不足のまま話は進む。説明不要だと言わんばかりに。彼女の置かれた状況は悲惨。だけどそれを受け入れて生きるしかないと思っていた。だが、ひとりの破天荒な女に出会ってまさかの一夜を過ごすことになる。たった92分の映画だが、次から次へと進む展開に圧倒される。
描かれるのはふたりの女の出会いから始まるたった2日間の旅。仁川空港からソウルまでの短い旅から始まる。緑の髪の女は彼女を想像を絶する世界に導いてくれる。最初はおどおどしながらついて行っていたが、やがて気がついたら自分も枠をはみ出している。夫を殺したところ(その時はまだ死んでなかったが)から、暴走する。
ファン・ビンビン演じるジンシャは中国から逃れて韓国にやってきた女。だがここでも抑圧された日々を過ごしている。暴力的な夫からは逃れられない。彼女の諦めた生き方を緑の髪の女が変えてくれる。まさかの旅が始まる。こんなことになるなんて思ってなかった。予想だにしないことが起きる。裏社会を目にしてそこに飲み込まれる。だけどそれが彼女の旅立ちになる。ふたりで始めたことからひとりで旅立つまで。未来は見えないけど走り出したからとまらない。男たちの暴力に屈することなく、反撃することで自由を手にする。こんな現実はないかもしれない。都合よく逃げ切ることはできないだろう。だけど、ここにいる。子犬を胸に抱いてバイクを走らせるラストシーンはなんだか爽快だ。気がつくと彼女の髪も少し緑になっている。
監督は若い女性監督であるハン・シュアイ。話される言語は、ほぼ韓国語で一部北京語。広東語はなく。ソウルを舞台にした映画だが、中国映画でも韓国映画でもなく香港映画。