「振り返るな」というタイトルの持つインパクトに魅せられた。3話からなるオムニバスである。ホン・サンスの助監督をしていたキム・ヨンナムのデビュー作。師匠譲りの文体だが、ホン・サンスほどには過激でなく、難解でもない。まぁ常識を兼ね備えた新人。それっていいところでもあるが、少し物足りない。ホン・サンスのミニュチアの域を出ない。
第3話のラストなんて、ちょっと遣り過ぎで、そこまでの流れからはみ出してる。ああいうのはホン・サンスが好きなのだがこの作家には似合わない。もっと常識的なところで全体を構成すべきだった。
真田コジマの『アンクレットタワー』を読んだところなのでついつい比較してしまうのだが(テイストがよく似てるのだ)そうするとこの作品は分が悪い。『アンクレットタワー』の方が通俗だがおもしろい。その差はテーマの設定を明確にしたか否かにある気がする。
この映画は、タイトルそのままのストレートさがもっと内容に反映されてもよかった。よく分からないけど面白いホン・サンスとの差別化がそれではっきり図れるのに、中途半端なところで気取るから居心地の悪い映画になるのだ。
真田コジマは、象徴として、少女が鉄塔に登るというエピソードをはっきり示し、3組の男女の愛の再生として全体を纏めた。しかし、キム・ヨンナムは象徴としての『ドント・ルック・バック』が示すものを、それぞれのエピソードで示しきらない。もちろんタイトルで言ってるからそれ以上いらないのかも知れないが、そこを韜晦させることで、それが作り手のテレに見えてしまうのが惜しい。1本の映画としての求心力が欲しいのだが。
第1話は姉と暮らすダンサー志望の女の話。恋人はいるが、彼の自分への距離の取り方がもどかしい。自分たちを棄てたはずの父を受け入れようとするお人よしの姉に対しても距離を感じてしまう。自分がぴったり落ち着くような場所がない。あげくは不動産屋に騙され新しく借りた部屋を追い出される。彼女の世界との違和感が面白い。それだけが淡々と描かれる。
第2話は公衆電話の撤去作業をする男の話。彼のストーカー行為を相手の女が受け入れることで、彼がひるんでしまい、本当のこと(盗聴してたこと)まで話してしまい、彼女から突き放される。このへんの一瞬で急展開していく互いの気持ちの変化がいい。電柱の上と彼女の部屋という距離感も見てておかしい。
第3話はあと少しで兵役から帰って来る30男の、最後の一時休暇の日々が描かれる。妻の浮気を知り、周囲から取り残されている現状に焦り、それらすべてを自分の中に飲み込み受け入れていく。友人の結婚式に行き、そこで出逢った新郎のもと恋人と一夜を共にする。
ストーリーは実に興味深いし、それをそつなく、うまく見せてくれるのだが、何かが足りない。ただ、現実を流すように見せても、そこには何かがあって欲しい。その《何か》を描くのが映画の使命ではないか。
第3話のラストなんて、ちょっと遣り過ぎで、そこまでの流れからはみ出してる。ああいうのはホン・サンスが好きなのだがこの作家には似合わない。もっと常識的なところで全体を構成すべきだった。
真田コジマの『アンクレットタワー』を読んだところなのでついつい比較してしまうのだが(テイストがよく似てるのだ)そうするとこの作品は分が悪い。『アンクレットタワー』の方が通俗だがおもしろい。その差はテーマの設定を明確にしたか否かにある気がする。
この映画は、タイトルそのままのストレートさがもっと内容に反映されてもよかった。よく分からないけど面白いホン・サンスとの差別化がそれではっきり図れるのに、中途半端なところで気取るから居心地の悪い映画になるのだ。
真田コジマは、象徴として、少女が鉄塔に登るというエピソードをはっきり示し、3組の男女の愛の再生として全体を纏めた。しかし、キム・ヨンナムは象徴としての『ドント・ルック・バック』が示すものを、それぞれのエピソードで示しきらない。もちろんタイトルで言ってるからそれ以上いらないのかも知れないが、そこを韜晦させることで、それが作り手のテレに見えてしまうのが惜しい。1本の映画としての求心力が欲しいのだが。
第1話は姉と暮らすダンサー志望の女の話。恋人はいるが、彼の自分への距離の取り方がもどかしい。自分たちを棄てたはずの父を受け入れようとするお人よしの姉に対しても距離を感じてしまう。自分がぴったり落ち着くような場所がない。あげくは不動産屋に騙され新しく借りた部屋を追い出される。彼女の世界との違和感が面白い。それだけが淡々と描かれる。
第2話は公衆電話の撤去作業をする男の話。彼のストーカー行為を相手の女が受け入れることで、彼がひるんでしまい、本当のこと(盗聴してたこと)まで話してしまい、彼女から突き放される。このへんの一瞬で急展開していく互いの気持ちの変化がいい。電柱の上と彼女の部屋という距離感も見てておかしい。
第3話はあと少しで兵役から帰って来る30男の、最後の一時休暇の日々が描かれる。妻の浮気を知り、周囲から取り残されている現状に焦り、それらすべてを自分の中に飲み込み受け入れていく。友人の結婚式に行き、そこで出逢った新郎のもと恋人と一夜を共にする。
ストーリーは実に興味深いし、それをそつなく、うまく見せてくれるのだが、何かが足りない。ただ、現実を流すように見せても、そこには何かがあって欲しい。その《何か》を描くのが映画の使命ではないか。