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映画・演劇のレビュー

『さらば復讐の狼たちよ』

2012-07-14 22:41:13 | 映画
 なんですか、このアホなタイトルは! きっとこの傑作映画を誰にも見せないための誰かの陰謀に違いない。その証拠に封切り2日目の土曜に見たのだが、難波の小さな劇場はがらがらだった。それにしてもチャン・ウェン監督作品だから見たのだが、ここまでやるとは思いもしなかった。衝撃の傑作である。中国本国では歴代1位を記録した国民映画で、なのに日本ではこのタイトルでひっそり公開、である。いつものことだが、もったいない話だ。

 チョウ・ユンファとチャン・ウェン主演のアクション映画ということしか、知らなくて見たのだが、なんのなんの、これは黒沢明の『七人の侍』に匹敵する。『七人の侍』と『用心棒』を足して2で割る映画だ。いや『用心棒』というより『椿三十郎』のほうが近いか。

 1920年代が舞台。正邪の頭脳合戦である。でも、一概にチャン・ウェンは正で、チョウ・ユンファが邪、というわけではない。チャン・ウェンが盗賊団の親分で、酷い奴なのだが、偽の知事としてこの村にやってきて、その村のボス、チョウ・ユンファと戦うというただそれだけの話。だが、それがとてもよく出来ているから、スクリーンから目が離せなくなる。次はどうなるのか、興味深々で見守る。ここには映画ならではのドキドキと興奮がある。こういう娯楽映画が見たかったのだ! と単純に快哉を叫ぶ。

 ラストで「勝ったのは俺達の力だ。村人ではない」と チャン・ウェンは言わないけど、そんな感じだ。中国人と日本人の差である。「勝ったのは百姓たちであり自分たちではない」とつぶやく勘兵衛とは違う。

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