実はDVD以上に小説の方が12月はたくさん読んでいる。この1ヶ月で20冊くらい読んだ。ここには書いてないけど、傑作揃いだ。でも、書く時間がないから、放置したまま。ねじめ正一『ナックルな三人』とか、朝比奈あすか『人間タワー』なんていう凄いのや、小路幸也も『東京カウガール』や『マイ・ディア・ポリスマン』だけではなく、『花歌はうたう』も読んでいる。
柚木麻子の傑作『さらさら流る』(彼女の本なのに、驚くくらいに、暗い! でも、すばらしい出来栄えだ!)まだ付き合ってもいない男の子とふたり、暗渠をたどる一夜の旅。その後の彼女の人生。そのふたつを並行して描きながら、東京の夜、東京で暮らすことが、伝わってくる。先日、孫のお宮参りに参加するため、東京の娘たちのところに行って来たから、とてもリアルにあの雰囲気がわかる気がした。何度行っても、あの雰囲気は新鮮だ。大阪と東京ではまるで空気が違う。夜の練馬、光が丘を歩いて(娘の家)、新宿を歩いて、(泊まったホテル)そんなことを認識する。
山内マリコ『メガネと放蕩娘』(なんと、安易なタイトルだ。このバカバカしいほどのシンプルさが、この傑作の、それらしい雰囲気を伝えるのだけど)も、素晴らしかった。シャッター通り商店街の再生を、2人の姉妹を中心にして描くのだが、単純ではない。でも、驚くほど単純な答えに至る。それに納得するのは、そこに至るプロセスがリアルだからだ。
近藤史恵『インフルエンス』も面白すぎて、一気に読んでしまった。(電車の1往復と夜寝る前の時間で)後半はさすがに「それはないわ、」とも思うけど。暗くて、怖くて、たたみかけるようなタッチで、読み出したら最後まで止まらない。3人の少女たちのたどる30年に及ぶ日々が綴られる。
でも、この時期のベスト本は、河出から出た文藝別冊の『大林宣彦 ウソからマコトの映画』だった。読みながら、何度泣いてしまったことか。大林さんの話すこと、大林さんについてみんなが話すこと。そのひとつひとつが胸に突き刺さる。ここで登場するみんなと同じだ。僕たちは大林さんの映画を見て育った。リアルタイムで『HOUSE ハウス』を見た時の衝撃は40年経った今でも鮮明にある。あれから彼の作るすべての映画を映画館で公開時に見てきた。(と、書きたいところだけど『この世の花』だけはDVDでしか見てない)大阪では1月公開となる『花筐』が早く見たい。
(本や小説の話だったのに、最後にはまた、映画のことになってしまった。)