ラストでしっかりとエンドマーク(「完」とか「終」)が出るような芝居だった。緞帳を下ろしたのも、その意図ゆえであろう。もちろんここが小劇場ではなく、ホールでの公演(八尾プリズム小ホール)だったから可能なのだが。見事にとてもわかりやすい終わり方で、「あぁ、芝居を見たよな、」という気分にさせてくれる。もやもやとしたものが残らない。
冒頭のナレーションで登場人物の紹介をするところからして、確信犯だ。ちゃんとした「お話」を見せてやろう、という作者の意図は明白。僕たちはそれに乗せられて、物語を楽しめばいい。商業演劇としても十分通用する。こんなおしゃれな芝居を虚空旅団がやる、というのがなんだか頼もしい。
それにしても意味深なタイトルだ。北村想自身も当日パンフに「どうも不思議なタイトルだなぁ」と、書いているけど、背中にアトリエがあるって、どういうことなのか。きっと深い意味なんかない。でも、背中に入れ墨がある女というイメージからの連想か。いや、もっと別の意味がある、ような、ないような。そこに拘ると小劇場演劇になるのだが、想さんはそんなヤボはしない。
お話は「謎の女」というよくあるパターン。ミステリー御用達のファム・ファタールだ。画伯の恋人で、このアトリエにやってくる女らしい。その女は、モデルをしている女と、画家のパトロンである画商の話に登場する。彼女が実在するかどうか、というのが、お話の核心部分を担う。同居していた妹夫婦の話と同時に。(こちらのほうが、メインのはずなのだが、印象では、前者の方が大きい)
しっかりとしたミステリー仕立てになっているけど、お話は重いタッチにはならない。(北村想さんだから、当然か)。殺人事件とかもちゃんとでてくるのに。このさらりとした肌触りのオーソドックスなドラマを演出の高橋恵さんはツボを心得た演出で実にスマートに見せてくれる。スマートで軽やかなのに、きちんと重厚で、ゴージャスな感じ。なんだかちょっと贅沢な気分にさせられる芝居なのだ。小さな話だし、50万のワインとか出てくるけど、芝居自身はハイソな人々の話ではない。どこにでもいそうな人たちの、でもちょっと特別なお話。その辺のさじ加減が絶妙。とても楽しめた。