習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『BOY A』

2009-07-05 22:18:25 | 映画
 また、重い映画を見てしまった。106分、見ている間は、いつ何が起こるのかと、気が気ではない。ずっと緊張が続く。疲れた。そして、あの救いのないラスト。いい映画だと思う。だが、くたくたになる。

 映画の進行とともに、彼の過去が徐々に明らかにされていく。家庭の事情や、同じように孤独な少年との出会い、2人が友情を育んでいく過程。そして、彼らが起こした事件。出所してきた後、保護司の指示ですべてを隠して、新しい人生を始める。素性を隠したまま、おとおどして生きる。だが、そんな中で、初めて本当の人生を生き始める。事件により、彼の人生は終わる。まだ、ほんの子供の頃、だ。ずっと少年院の中で過ごし、外の世界も、子供時代も失い、ようやく今、大人の青年として人生を再スタートする。

 過去は消せないのか。周囲の目を欺き生きることの苦痛。同級生の少女を殺した憎むべき犯罪者。事実は事実だ。だが、ほんとうのことは誰も知らない。いや、そんなことより、今、罪を償い出所してきた彼を受け入れない世間が怖い。だが、何も知らない人たちにとっては彼はおぞましい犯罪者でしかなく、いつまた同じような事件を起こしてもおかしくない存在なのだろう。マスコミの過剰報道、ネットでの中傷、あることないことおもしろおかしく書かれていく。

 あくまでも彼の視点から見つめるから、彼がかわいそうでならないが、被害者側から見れば当然事情は変わる。先日見た『愛を読むひと』と同じだ。この2本を並べるといろんなことが見えてくる。そういう意味では、『重力ピエロ』の犯罪者のケース。あの渡部篤郎の演じた男のスタンスは、この映画の少年とは真反対で、この2本の描き方を並べてみるのも興味深い。

 どこまでも救いがない。保護司と彼の息子との関係。自分の子供のことより、仕事である自分が受け持つ子供のことにかかりきりになる彼に対して息子がしたこと。痛ましい。

 なんとか上手く生きれそうだった。恋人も出来た。親友も出来た。幼い少女の命も救った。だが、そんなことでは償えない、とでも言わんばかりの暴力が彼を襲う。もうどこにも帰れない。海を見に行く。そこで彼女と再会する。本当のことなのか、幻でしかないのか、曖昧なまま、ラストに至る。

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