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これは四世鶴屋南北の『桜姫東文章』と山東京伝の著作を原作とするらしい。映画の最後のクレジットで知った。もちろん、そんなことが大事なのではない。このバカバカしいにもほどがある映画が、そういうところにインスパイアされてあることがおもしろい。歌舞伎や黄表紙、洒落本なんて江戸時代にはゴシップ本でしかなく、荒唐無稽な庶民のための興味本位の講談なのだ。ただ面白ければそれだけでいい。だからエロ、グロ満載で、理屈なんかいらない。ただただ無茶苦茶をどこまでもエスカレートさせるだけだ。
橋本一監督が東映を離れて自由気ままに作ったこの低予算映画は、往年の東映エログロ路線の流れを見事に引き継ぐ。東映の中でも今の時代はこんなバカな映画は作れないのが現状で、それをどこの誰が作ろうと企んだのか知らないが、よくぞやってくれた。映画にはこういう徒花が必要なのだ。真面目できちんと作られた芸術映画も悪くはないが、荒唐無稽で、ただおもしろいだけの見世物映画によって憂さ晴らしがしたいと思う人もたくさんいるはずだ。映画は1時間半の祭りである。これは娯楽映画と呼ぶことすら、はばかられる。そんなくだらない。でも愛おしい映画の誕生である。
ヒロインを演じた新人日南響子が素晴らしい。体当たり演技とか、そんな陳腐なことは言わない。彼女はこのワンダーランドに迷い込んだアリスだ。なんだかよくわからないけど、気持ちがいい。初めて男に抱かれて、快感を感じ、彼を求めて家を飛び出す。そして娼婦となって、彼との再会を待つ。なんじゃ、これは! と思うしかないような設定だ。お姫様が、こんな淫乱女でいいのか! とか、思わない。彼女は娼婦になってたくさんの気持ち悪い男たちに抱かれながらも、自分をレイプしたあの男の面影を抱いて、夢見ている。ありえない、と百回書いてもまだ足りない。世の中の女たちからヒンシュクを買うだろう。でも、どんなに気味の悪い化け物のような男たち(遊郭に女を買いに来る男はそんな男ばかり、と描かれる。でも、彼女は店一番の人気娼婦で、3日並ばなくては相手にしてもらえないような女、そんな彼女を買える男なんだけど。)に抱かれようとも、穢れない。
すべてがリアルではないから、お人形のような彼女が際立つ。ただ何も考えないで、そこにいるだけ。でも、それがなぜか圧倒的な存在感を持つ。彼女が落ち延びた遊郭「地獄や」での日々も、その周辺の凄まじい狂気じみた空間も、すべて大袈裟すぎて、あきれるばかり。とても「かぶいて」いる。美と醜の対比を前面に押し出し、美はただ彼女だけにある。そのくせ、彼女を神々しく描くのではなく、この世界の中に埋もれさせる。時々彼女がこの映画の主役だったことすら、忘れてしまう勢いなのだ。凄まじく濃いキャラクターばかりが登場する。でんでん演じる破戒僧を頂点にして、魑魅魍魎どもが跋扈する。このワンダーワールドでの究極のラブストーリーというのがこの作品の骨格だ。彼女の王子様である盗人でレイプ魔を青木崇高が演じる。めちゃ気取っていて、かっこいい。いいのかこれで、悪党なのに。もちろん、それがいいのだ。これはそういう世間から非難轟々になるような胡散臭い映画なのだから。
橋本一監督が東映を離れて自由気ままに作ったこの低予算映画は、往年の東映エログロ路線の流れを見事に引き継ぐ。東映の中でも今の時代はこんなバカな映画は作れないのが現状で、それをどこの誰が作ろうと企んだのか知らないが、よくぞやってくれた。映画にはこういう徒花が必要なのだ。真面目できちんと作られた芸術映画も悪くはないが、荒唐無稽で、ただおもしろいだけの見世物映画によって憂さ晴らしがしたいと思う人もたくさんいるはずだ。映画は1時間半の祭りである。これは娯楽映画と呼ぶことすら、はばかられる。そんなくだらない。でも愛おしい映画の誕生である。
ヒロインを演じた新人日南響子が素晴らしい。体当たり演技とか、そんな陳腐なことは言わない。彼女はこのワンダーランドに迷い込んだアリスだ。なんだかよくわからないけど、気持ちがいい。初めて男に抱かれて、快感を感じ、彼を求めて家を飛び出す。そして娼婦となって、彼との再会を待つ。なんじゃ、これは! と思うしかないような設定だ。お姫様が、こんな淫乱女でいいのか! とか、思わない。彼女は娼婦になってたくさんの気持ち悪い男たちに抱かれながらも、自分をレイプしたあの男の面影を抱いて、夢見ている。ありえない、と百回書いてもまだ足りない。世の中の女たちからヒンシュクを買うだろう。でも、どんなに気味の悪い化け物のような男たち(遊郭に女を買いに来る男はそんな男ばかり、と描かれる。でも、彼女は店一番の人気娼婦で、3日並ばなくては相手にしてもらえないような女、そんな彼女を買える男なんだけど。)に抱かれようとも、穢れない。
すべてがリアルではないから、お人形のような彼女が際立つ。ただ何も考えないで、そこにいるだけ。でも、それがなぜか圧倒的な存在感を持つ。彼女が落ち延びた遊郭「地獄や」での日々も、その周辺の凄まじい狂気じみた空間も、すべて大袈裟すぎて、あきれるばかり。とても「かぶいて」いる。美と醜の対比を前面に押し出し、美はただ彼女だけにある。そのくせ、彼女を神々しく描くのではなく、この世界の中に埋もれさせる。時々彼女がこの映画の主役だったことすら、忘れてしまう勢いなのだ。凄まじく濃いキャラクターばかりが登場する。でんでん演じる破戒僧を頂点にして、魑魅魍魎どもが跋扈する。このワンダーワールドでの究極のラブストーリーというのがこの作品の骨格だ。彼女の王子様である盗人でレイプ魔を青木崇高が演じる。めちゃ気取っていて、かっこいい。いいのかこれで、悪党なのに。もちろん、それがいいのだ。これはそういう世間から非難轟々になるような胡散臭い映画なのだから。