最近の坂本さんはなんだか、とてもおとなしくなった。以前はあんなにめちゃくちゃだったのに。それって、彼が大人になったからなのか。
確かに今回も、内容も表現も大胆だし、めちゃくちゃだ。そういう意味では以前とかわらないのかもしれない。だいたいチラシ見ても、そこに芝居のタイトルがないし、と思ったらよく見たらあの長いタイトルが。「りゅう君のベイビー産んじゃってゴメンね…。でもうちアンタのことメッチャ好っきゃねん。」と。そんなふざけたところが好き。だが、芝居はこの長いタイトルそのままの話なのに、なぜかそれほどのインパクトがない。ミュージカルスタイルもバカバカしいけど、それだけ。
あのチラシには凄いインパクトがあった。これはいったい何なんだ、と思わせる。全くわからないのに、心惹かれる。漫画のコマ割りの中で、芝居の解説がなされ、よく見たらちゃんとタイトルはあるけど、それって、ただの内容説明で、でも、なんだかすごい。芝居もその説明そのままの展開を見せるけど、なんか少し違う。
だいたいあのタイトルなら、「りゅうくん」ではなく、「ウチ」のほうが主人公にならなくてはおかしい。しかも「ウチ」(由利)を演じているのが男優で、ブスという設定もおかしい。お話はそれではシリアスにはならない。コメディになってしまう。痛みが伝わらない。チラシにあるようにかわいい女の子に手を出し、妊娠させて生活にまみれる、という展開をなぜしなかったのだろうか。
先にも書いたが、芝居はりゅうくん主体で彼の側から描かれる。関西小劇場に対しての坂本流のメッセージがあるのかと期待したのに、そこもただの設定でしかない。『ロミオとジュリエット』とか『寿歌』の引用もあまり意味をなさない。さらには結婚して子だくさんになるという生活を描く部分も、それでどうした?という程度。この作品がどこに行き着こうとするのかが、見えてこないから、徹底的にばかばかしいだけの芝居になってしまう。
この題材から坂本さんがどんな爆弾を落としてくれるのかと期待したのにこれでは少しがっかりだ。世界なんか平気でたたき壊してしまうくらいのめちゃくちゃさがアンディ坂本だったはずなのに、大人の坂本隆太朗は常識的なところで、妥協する。なぜだろう。