このセルフパロディはとても自虐的で露悪的だ。わざと過剰にそうしていることは明白なのだが、それでも読んでいて、胸くそ悪い。カバーの自分の顔写真もうざったいし、羽田圭介というドンファン気取りの気色の悪い作家を殊更強調している。本人はしてやったりであろうが、それにつきあっている読者はたまったものではない。しかし、この先に何があるのか気になり、このまま終わるわけがないと、期待させ、ページを繰る手が止まらない。結局作者の思惑に乗せられている。
ラストで少し逃げたな、と思うけど、現実と妄想(理想の生活)のはざまが、曖昧になってしまうという、オチはありきたりだけれど、仕方ないかもしれない。ただ、もっと凄い終わりが待っている気がしたので、あっけなさ過ぎて、少し残念だった。
出版社の実名をばんばん出して、作家名も差し障りないところは匂わせて、そこまでしたら、その先はどうなるのか、かなり気になる。描かれるところはリアルだけれど、大事なことはそこではなく、人間は欲望を満たされた先に何を見いだすのか、ということだから、そうである以上、そこに対しての「ある種の答え」は出してもらいたかった。