今年どんどん新作が公開されていく絶好調の黒沢清監督作品。今回は菅田将暉を主演に迎えて挑むサスペンススリラー。ただ前回の『蛇の道』が残念な一作だっただけに期待と不安を抱いて見る。評判はいいみたいだし、今年のアカデミー賞日本代表にも選ばれたらしい。だけど、これは完敗である。今回もまた、まるで不完全燃焼。
一体なんだったのだろうか。これは。前半部分は転売ヤーの話で、何があるというわけではないけど異様な緊張感を強いられる黒沢らしい展開。だけど、後半の殺し合いには閉口する。まるで説得力はないし、なんでこうなるの、と首を傾げる。いきなりの展開に唖然。まるで別の映画を見ているよう。
さまざまな人物がいきなり出てきてお話に介入する。そのこれ見よがしな描写も嘘くさい。古川琴音の恋人なんて何のために出てきたのか、訳がわからん。奥平大兼の弟子は何者だったんでしょうか? 彼に拳銃を渡す松重豊なんて何? いろんなところが謎だらけで、それが映画としての魅力にはならず、ただの欠陥でしかない。
『蛇の道』同様、あまりに話が無理無理な展開。それでもそれが今までなら、黒沢さんらしい怖さになっていくのだが、これはそうはならない。黒沢マジックはもう効かない。