2人芝居。2人が全く動かない。椅子から立つことはない。ずっと椅子にすわったままで芝居は始まり、終わる。1時間15分。音はほとんどないし、照明も変わらない。しかし、単調な芝居ではない。異常な緊張感に包まれる。田口哲さんの演出は徹底している。余計なものをとことん排除して、芝居を構成しようとする。
女(京ララ)はなぜ、従姉妹を殺したのか。バラバラ死体にしてさまざまなところに、棄てていく。だが、そのうちの頭部のみがどこからも出てこない。犯人である彼女は頑なにその所在の自供を拒否。そのせいでいまだ行方が分からない。インタビュアー(風太郎)が彼女の犯罪について、質問する。しかし、犯行の核心に近付くことはできない。
芝居の終盤、男が感情的になるシーンがある。だが、そこから大きな展開があるわけではない。女はずっと正面を向いたままだし、彼女の感情には揺れが見られない。質問には答えるが、謎は解けないどころか、深まるばかりだ。
膨大な原作(マルグリット・デュラス『ヴィオルヌの犯罪』)からその一部を抽出して舞台化したので、これだけでは何も描けないのかも知れないが、たとえ全編を上演しても謎解きが出来るわけではない。これは殺害理由を分からせるための話ではない。デュラスのいつものやり方である。
この迷宮世界に足を踏み込んだ男は気付けば女の内面世界にシンクロしてしまった自分を感じる。彼はそれに対して感情的になっていく。しかし、その時にはもう心情的には彼女の共犯者となっているのだ。見た目の2人の距離は1センチすら縮まないが、彼は彼女の闇に飲み込まれている。
僕たちはラストまで舞台から目が離せない。人の心の奥なんて分からないものだが、それにしてもこの芝居を見ていてますますその謎は深まるばかりだ。いくら言葉を重ねても本当のところは見えない。結局僕たちも、彼女の心の迷宮を彷徨うだけなのである。
女(京ララ)はなぜ、従姉妹を殺したのか。バラバラ死体にしてさまざまなところに、棄てていく。だが、そのうちの頭部のみがどこからも出てこない。犯人である彼女は頑なにその所在の自供を拒否。そのせいでいまだ行方が分からない。インタビュアー(風太郎)が彼女の犯罪について、質問する。しかし、犯行の核心に近付くことはできない。
芝居の終盤、男が感情的になるシーンがある。だが、そこから大きな展開があるわけではない。女はずっと正面を向いたままだし、彼女の感情には揺れが見られない。質問には答えるが、謎は解けないどころか、深まるばかりだ。
膨大な原作(マルグリット・デュラス『ヴィオルヌの犯罪』)からその一部を抽出して舞台化したので、これだけでは何も描けないのかも知れないが、たとえ全編を上演しても謎解きが出来るわけではない。これは殺害理由を分からせるための話ではない。デュラスのいつものやり方である。
この迷宮世界に足を踏み込んだ男は気付けば女の内面世界にシンクロしてしまった自分を感じる。彼はそれに対して感情的になっていく。しかし、その時にはもう心情的には彼女の共犯者となっているのだ。見た目の2人の距離は1センチすら縮まないが、彼は彼女の闇に飲み込まれている。
僕たちはラストまで舞台から目が離せない。人の心の奥なんて分からないものだが、それにしてもこの芝居を見ていてますますその謎は深まるばかりだ。いくら言葉を重ねても本当のところは見えない。結局僕たちも、彼女の心の迷宮を彷徨うだけなのである。