久々のげんだつばによるオリジナル作品だ。期待に胸が高鳴る。地下アイドルと3人組のじいさんたちのお話という秀逸な設定とストーリーに興味津々で見たのだが、せっかくのそのアイデアが生かし切れていない。
しかも、相変わらず暗転が長いし多い。芝居全体の3分の1くらいが暗転なのではないか、と思わされるくらいに延々と待たされる。どうしてこんな演出をするのだろうか。もっとテンポよく見せたならいいのに、これではまだるっこしいし、イライラさせられるばかりだ。
じいさんたちの要らぬおせっかいに辟易しながらも、気づけば彼らの応援に元気をもらっている、とかいうようなよくある展開でもよかったのではないか。なのに、最初から彼女は自分では何もしないで、じいさんたちを頼っているという基本設定自体には無理がある。「そんな女の子はいないよ」と思わせるようではこの作品には乗れない。いろんな可能性を秘めたお話なのだと思う。それだけにまるで話が広がらないのはどうしたことか。
老人がアイドルを通して生きがいを見つけていく、というアイデアが全く生かされていないのだ。これは本来、老人たちが彼女から生きる勇気をもらう、という話のはず。なのに、どうしてこんなにも通り一遍の話になってしまったのだろうか。あんなにも枯れてしまって元気のない大坊晴彦演じる老人と、とても可愛いのに自分に自信を持てない小林彩夏演じるアイドルという主人公ふたりの対比をもっと明確にして、そこから彼らの疑似恋愛ドラマなんかにまで発展させられたら、なんだか凄い芝居になったのではないか、なんて夢想する。
これはきっとそんなこんなのいろんな可能性を秘めた作品なのだ。それだけにこんなふうに当たり障りのない予定調和に終始するのが残念でならない。しかも、せっかく作った回り舞台もあまり生かされないまま、終わるし。いろんな意味で作り手の気合いが空回りしているようで、なんだかもったいない。