森絵都と森見登美彦が帯で褒めているから、読むことにした。ふたりの「森」が誉める森バジルとは何者なのか。(森じゃないけど、辻村深月も褒めていた)
5つの短編(中編)からなる連作。5つのジャンルの作品が並ぶ。それぞれは微妙につながる。登場人物やエピソードがリンクしているのだ。ただ、そこにはかなり無理がある。最初の「推理小説」はあっけないし、4つ目の「幻想小説」は僕にはつまらない。高校生男女ふたり組がM1に挑む二つ目の「青春小説」が面白いけど、それだけ。一番長い「SF小説」と最後の「恋愛小説」はまあまあの出来。
ほんとはジャンルなんてどうでもいい面白ければそれでいい。だけど、ひとつの世界観に無理矢理話を押し込むから、まとまりのない作品になった。アイデア倒れの凡作。改めて帯を見ると、決して森絵都も森見登美彦もこれを絶賛しているわけではなかった。
企画に引きずられて描くべきものが後回しになった。まず作品世界を右往左往する彼らの物語こそが最優先されるべきである。