若い新藤風の本格的デビュー作『転がれ!たま子』はコメディーであるにもかかわらず、全く弾まないオフビートの映画。果たして何をねらってこういう作り方をしたのか、想像もつかない。
しかし、ここには作り手の頑固な意志が貫き通されてあるのは、明確だ。中途半端な妥協は一切ない。だからここまで清々しい大失敗作となる。それは状況やケースは全く違うが長崎の『闇打つ心臓』にも通ずるものが、あるような、ないような。(偶然この2本を同じ日に見たのもひとつの運命か)
時代から取り残されてしまったような町。半径数キロの狭いエリアからヒロインのたま子は一切出ることはない。この町の中だけで生きている。自分の家(母が美容室をしている)と、近所のパン屋<日進月歩堂>、そして家を出て行ったのに近所に住んでる父の自動車整備工場、これで彼女の世界は全てだ。
ずっと鉄カブトを被り続け、誰とも一言も話さず(映画の前半は全く喋らないのだ)、甘食だけを食料にして生きてきた。学校にも行かず、働きもせず、ただ、生きている。そんな彼女を家族は見守り続けている。美容師の母、バスガイドを目指す兄、家を出ても近所に住む自動車整備工の父。
ある日たま子は、自らの食い扶持を稼ぐためにバイトに行く。と、言っても、彼女は何も出来ず周囲の人に迷惑をかけるだけで、それでも、1日300円貰い、それで、日進月歩堂に甘食を買いに行く。そんなふうにして彼女の毎日はある。
映画は日進月歩堂の主人が倒れ、主食である甘食が食べれなくなったたま子がパニックを起こし、最期の手段として、自分で甘食を作るためパン屋に修行しに行く姿を描く。これだけのストーリーである。ここにはこれ以上の何ものもない。しかも、そこから何らかのメッセージを伝えようというのでもない。
彼女が生きていく術を見つける、という一応のストーリーに対して作者は何一つ意見や感想すら述べようとしないのである。何のためにこの映画を作ったのかすら定かでない。
シリアスなタッチで、女の子2人の同居生活を描いた『ラブ・ジュース』でデビューしたこの若い女性監督は、前作に続き、ここでも、独りよがりの世界観を提示するだけで、それ以上何もしない。出来ないのではなく、やる気がないのだ。
どうしてこんな怖いことをしようとするのか。そこに込められた作者の想いは、残念だが映画からは伝わってこない。しかし、この頑固さは今後彼女が本当の自分の映画を作っていく上で必ず力になるはずだ。まだ、長い歳月がかかりそうだが、きっとこの人は凄いものを作ってくれる。そんな気にさせてくれる未完の大型新人である。
なぜか、道の真ん中に出来た大きな穴。それにたま子が落ちてしまう。そしてそこから這い上がってくるという象徴的なエピソードが面白い。普通の映画なら主人公に課された試練をこういう形には提示したりしない。この映画はとてもいびつにそれを表現する。おもしろいと言えばそう言えなくもない。微妙。
しかし、ここには作り手の頑固な意志が貫き通されてあるのは、明確だ。中途半端な妥協は一切ない。だからここまで清々しい大失敗作となる。それは状況やケースは全く違うが長崎の『闇打つ心臓』にも通ずるものが、あるような、ないような。(偶然この2本を同じ日に見たのもひとつの運命か)
時代から取り残されてしまったような町。半径数キロの狭いエリアからヒロインのたま子は一切出ることはない。この町の中だけで生きている。自分の家(母が美容室をしている)と、近所のパン屋<日進月歩堂>、そして家を出て行ったのに近所に住んでる父の自動車整備工場、これで彼女の世界は全てだ。
ずっと鉄カブトを被り続け、誰とも一言も話さず(映画の前半は全く喋らないのだ)、甘食だけを食料にして生きてきた。学校にも行かず、働きもせず、ただ、生きている。そんな彼女を家族は見守り続けている。美容師の母、バスガイドを目指す兄、家を出ても近所に住む自動車整備工の父。
ある日たま子は、自らの食い扶持を稼ぐためにバイトに行く。と、言っても、彼女は何も出来ず周囲の人に迷惑をかけるだけで、それでも、1日300円貰い、それで、日進月歩堂に甘食を買いに行く。そんなふうにして彼女の毎日はある。
映画は日進月歩堂の主人が倒れ、主食である甘食が食べれなくなったたま子がパニックを起こし、最期の手段として、自分で甘食を作るためパン屋に修行しに行く姿を描く。これだけのストーリーである。ここにはこれ以上の何ものもない。しかも、そこから何らかのメッセージを伝えようというのでもない。
彼女が生きていく術を見つける、という一応のストーリーに対して作者は何一つ意見や感想すら述べようとしないのである。何のためにこの映画を作ったのかすら定かでない。
シリアスなタッチで、女の子2人の同居生活を描いた『ラブ・ジュース』でデビューしたこの若い女性監督は、前作に続き、ここでも、独りよがりの世界観を提示するだけで、それ以上何もしない。出来ないのではなく、やる気がないのだ。
どうしてこんな怖いことをしようとするのか。そこに込められた作者の想いは、残念だが映画からは伝わってこない。しかし、この頑固さは今後彼女が本当の自分の映画を作っていく上で必ず力になるはずだ。まだ、長い歳月がかかりそうだが、きっとこの人は凄いものを作ってくれる。そんな気にさせてくれる未完の大型新人である。
なぜか、道の真ん中に出来た大きな穴。それにたま子が落ちてしまう。そしてそこから這い上がってくるという象徴的なエピソードが面白い。普通の映画なら主人公に課された試練をこういう形には提示したりしない。この映画はとてもいびつにそれを表現する。おもしろいと言えばそう言えなくもない。微妙。