もうすぐ、第13回大阪アジアン映画祭が始まる。今年も刺激的なラインナップが並んでいる。数年前までは毎回4,5本は見ていたのだが、昨年から見るのをやめた。時間もないし、チケットも取りにくいからだ。わざわざ前売りを買ってまで見るのは僕にはムリ。映画は当日、時間が出来たときに見るようにしている。以前はそれでも十分対応できたのに、最近はすぐに売り切れるようだ。いいことだとは思うけど、これでは僕の出番はない。そんな中、昨年公開の映画を1本だけ見た。
昨年の大阪アジアン映画祭で観客賞かなんかを取った作品を朝日放送がこの時期に毎年TVで上映する。今年はこの『七月と安生』である。昨年、パンフを見た時この映画が一番見たい、と思っていたので、ラッキーだった。期待通りのいい映画だった。
2人の女の子の友情物語である。環境の違う世界で生まれたふたりがなかよくなり、ずっと一緒に過ごす。子ども時代から青春期を過ごし、大人になる。同じ男の子を好きになるけど、安生は七月のために身を引く。でも、彼は実は安生のことが好き、とかいうよくあるパターンのお話なのだ。だけど、この映画が素晴らしいのはある種のパターンがそれぞれまったく別の物語に繋がるという当たり前の展開をしっかりと見せてくれるところになる。そんな当たり前のことがなぜか、新鮮で、感動的だ。ありきたりの中にこそ最高の輝きがある。かけがえのない、あなただけの物語。それをとても丁寧に見せてくれる。たとえ離れていてもふたりがずっと一緒だったことが、はっきりするラストまで、スクリーンから目が離せない。終盤驚きの展開を見せるのも、そこまでのありきたりスレスレのドラマが、実は決してそうじゃないのだ、ということの証明になる。映画ならではの素晴らしい幕切れだ。
人は一生かけて自分の人生を生き抜く。そんな当たり前のことに目頭が熱くなる。少女たちが出会い、全力で生きた姿が鮮やかに刻まれたそんな小さな傑作である。