これをほめるのは、きっと宣伝マンだけ。シャマランはもう終わってる。一世を風靡した。驚異の作家だった。『シックス・センス』の衝撃のラスト。そんなこと、ありえない、と思わせた。ありえないことは、2度、3度続くと、ただの日常の風景と化す。もう誰も驚かない。驚くことが惰性になるとそれは悲惨だ。
今思うと『アンブレイカブル』は凄かった。僕は『シックス・センス』よりもこの2本目のほうを買うくらいだ。ワンアイデアではなく、2時間強の長尺をお話の力で引っ張っていき、そんなバカな、というところに落とし込む。傑作だった。だが、そこからはもう続かない。何をしても2番煎じにしかならない。低迷する彼は初心に戻ろうとして、失敗ばかりしている。もう「驚き」では対処できない。では、何をしたらいいのか。
だから、どうお話しかない。ストーリーテラーになるしかない。今回、24人格なんていうとんでもない男を登場させた。3人の女子高校生が監禁され、彼と戦う。そんな話をでっちあげた。それはそれで構わない。お話はどんな話でもいい。それをどう見せるか、だ。脚本家としての彼の腕の見せ所だ。
だが、まるで、つまらない。演出家としてもダメだ。続々登場してくる新しい人格を見せきることもできない。しかも、7人くらいで終わるし。熱演するジェームズ・マカヴォイがかわいそうになる。最後に登場するモンスターなんて、バカバカしくて笑える。(悲惨だ)
3人の女子高生たちも、描けない。どう戦うかを見せるわけでもない。これでは緊張感が持続しない。ここにトビー・フーパーの『悪魔のいけにえ』のような怖さは求めない。でも、新しさのカケラもない展開にうんざりする。もう彼は終わりなのか。でも、きっと僕は次も見てしまう。見届けたいと思うからだ。この稀有の才能の行く末が気になる。