2時間21分、ずっと戦いの連続技で見せきる。そういう意味ではこれは実にあっぱれだ。モノクロで描かれる冒頭のチャンバラシーンは凄い迫力で、ド肝を抜かれる。だが、その後も次から次へと、同じような戦いの連続で、でも、それぞれがとてもよく考えられていて飽きささない。凄い、凄いと同じ感想の連続。グルメ番組で、バカなゲストが、何を食べても「おいしいです!」を連発するのと同じで、バカな観客に成り下がるしかない。
そんな自分が悲しくなる。そのうちげっぷが出てきて、おいしいけど、もう「おなか一杯、」という状態になる。飽食は体に悪い。どんなにおいしいものでも、限界を超えれば、地獄だ。そんな感じ。
お話への仕掛けは絶対に必要。脚本家が悪い。死なない体を持つことの痛みを言葉でしか描けてない。だから、役者が(木村拓哉!)が全力で体現しても、それだけでは伝わらない。映画が空回りしていく。『ドラゴンボール』と同じで、倒しても倒しても、もっと強いのが出てきてキリがない。悟空は戦うことが生きがいだからいいけど、この映画の万次はそうではないから、めんどくさい。
これは、「死にたい、」という夢を実現するまでのお話ではない。「50年」という時間も字幕で提示されるだけで、映画としては描かれない。死なない、老いない50年の歳月の重みと、再会した妹(とウリ一つの女)とのドラマが表層的なレベルでしか描かれないで、ただひたすら敵との戦闘シーンに終始する。
大変な撮影だったということは、わかる。これだけの労力を注いで、作り上げた映画なのだ。それに見合うだけの評価をしたい。なのに、これではそれができないのがなんとも悔しい。