とてもシンプルでわかりやすい芝居だ。お話の中にすんなり溶け込んでいけるし、見ていて、楽しくて、これからどうなっていくのだろうか、と興味を駆り立てられる。結果、どんどん作品世界に取り込まれていくことになる。そして、気付くとその滅茶苦茶な話にどっぷりと浸っている。えっ?もうおしまいなの、と思わされて90分。全く退屈させないし、滅法面白い。これぞ、ザッツ・エンタテインメント!って感じだ。
いつのまにか、あの気狂い集団クロムがソフィスティケートされ、エレガントなエンタメになってしまった。これじゃぁ、動員がどんどん伸びてメジャーになってしまうのは当然のことだ。参りました、青木さん。あなたは凄い。天才だ。だいたい自分を一切変えることなく、世界を自分に引き寄せて、変えてしまう。そんなことが出来る人は、いない。青木さんが正しい。だから、クロムが正しい。そんなふうに信者でなくても思わされるくらいにこの芝居はよく出来ている。
なんだか、持ち上げすぎている気がしないでもない。しかも、具体的な内容に一切触れていないし。だいたいこんな太鼓持ちのような事を書いても、青木さんは少しも喜ばないことは250%くらいわかっている。だが、なんだかそんな風に書いてみたくなるくらいに、この芝居はよく出来ていた、と思う。
今回の新作は、ファミレスを舞台にしたいつものナンセンス・コメディーである。ハイテンションで、突然世界が思いもしない方向に転じても、全く意に介さない。話の整合性なんて、どうでもいい、と言わんばかりの暴走はお手の物。そのくせきちんとしたドラマツルギーに貫かれている。見ていて、自由自在に達しているな、と笑ってしまう。全く尖がっていない。とても丸い。なのに、いつものようにきちんと狂っている。まぁ、今の世の中の方が、クロムよりももっと狂っているから、クロムの狂気なんて、たかが知れている。可愛いものだ。青木さんはとても「かわいこぶりっこ」している。時代は青木さんを追い越してしまった。だから、青木さんはマイペースで芝居を作る。そういうスタンスって実は凄すぎる。ありえない、ことだ。でも、そんなありえないことを彼は平気でしてしまう。(当然、彼はそのことで焦ったりはしない)
ドリンクバーに睡眠薬を混ぜて、ファミレスの客がみんな眠ってしまう。睡眠薬ではなく、毒を盛っていたなら、みんな簡単に死んでいたことだろう。そういう導入部から、クライマックスまで、一気である。そんな中でも、一番ぶっ飛んだのは、奥田ワレタの頭をがしがしと齧るシーン。いきなり、齧ってしまうなんてないだろ、と思う。脈絡のなさはいつもの事だが、あたりまえに飛躍する。突飛なことをしようとしているのではない。クロムの凄さはこういうなんでもないシーンにある。それがストーリーとは別の次元で芝居の世界を形作る。
だから、ラストの取調べのシークエンスで、トーンが変わり、ゆっくりと流れていくのも、なんだか自然に受け入れられる。あそこでいきなりペースが変わっても、それがオチではなく、しかも、そのまま終わっていく。突き放された気分になる。なのに、幸せな気分にさせられる。
今回はクロムとしては肩の力の抜けたセカンドクラスの作品だろうと思われる。でも、渾身の力作よりもこういう作品のほうが芝居としては凄かったりもする。要するに青木秀樹は何をさせても、とんでもなく凄いということなのだ。次回、11月。『テキサス芝刈り機』が今から楽しみだ。東京公演はこれから始まる。何よりもまず、この芝居を見て欲しい。
いつのまにか、あの気狂い集団クロムがソフィスティケートされ、エレガントなエンタメになってしまった。これじゃぁ、動員がどんどん伸びてメジャーになってしまうのは当然のことだ。参りました、青木さん。あなたは凄い。天才だ。だいたい自分を一切変えることなく、世界を自分に引き寄せて、変えてしまう。そんなことが出来る人は、いない。青木さんが正しい。だから、クロムが正しい。そんなふうに信者でなくても思わされるくらいにこの芝居はよく出来ている。
なんだか、持ち上げすぎている気がしないでもない。しかも、具体的な内容に一切触れていないし。だいたいこんな太鼓持ちのような事を書いても、青木さんは少しも喜ばないことは250%くらいわかっている。だが、なんだかそんな風に書いてみたくなるくらいに、この芝居はよく出来ていた、と思う。
今回の新作は、ファミレスを舞台にしたいつものナンセンス・コメディーである。ハイテンションで、突然世界が思いもしない方向に転じても、全く意に介さない。話の整合性なんて、どうでもいい、と言わんばかりの暴走はお手の物。そのくせきちんとしたドラマツルギーに貫かれている。見ていて、自由自在に達しているな、と笑ってしまう。全く尖がっていない。とても丸い。なのに、いつものようにきちんと狂っている。まぁ、今の世の中の方が、クロムよりももっと狂っているから、クロムの狂気なんて、たかが知れている。可愛いものだ。青木さんはとても「かわいこぶりっこ」している。時代は青木さんを追い越してしまった。だから、青木さんはマイペースで芝居を作る。そういうスタンスって実は凄すぎる。ありえない、ことだ。でも、そんなありえないことを彼は平気でしてしまう。(当然、彼はそのことで焦ったりはしない)
ドリンクバーに睡眠薬を混ぜて、ファミレスの客がみんな眠ってしまう。睡眠薬ではなく、毒を盛っていたなら、みんな簡単に死んでいたことだろう。そういう導入部から、クライマックスまで、一気である。そんな中でも、一番ぶっ飛んだのは、奥田ワレタの頭をがしがしと齧るシーン。いきなり、齧ってしまうなんてないだろ、と思う。脈絡のなさはいつもの事だが、あたりまえに飛躍する。突飛なことをしようとしているのではない。クロムの凄さはこういうなんでもないシーンにある。それがストーリーとは別の次元で芝居の世界を形作る。
だから、ラストの取調べのシークエンスで、トーンが変わり、ゆっくりと流れていくのも、なんだか自然に受け入れられる。あそこでいきなりペースが変わっても、それがオチではなく、しかも、そのまま終わっていく。突き放された気分になる。なのに、幸せな気分にさせられる。
今回はクロムとしては肩の力の抜けたセカンドクラスの作品だろうと思われる。でも、渾身の力作よりもこういう作品のほうが芝居としては凄かったりもする。要するに青木秀樹は何をさせても、とんでもなく凄いということなのだ。次回、11月。『テキサス芝刈り機』が今から楽しみだ。東京公演はこれから始まる。何よりもまず、この芝居を見て欲しい。