ガス・ヴァン・サントが、なんと日本(というか、富士の樹海)を舞台にして、生と死のはざまで揺れる男の魂の放浪を描く詩的な幻想譚。なんで富士の樹海?と首をひねらざる得ないくらい、わざわざここにする意図はない。どこでもよかったのだ。たまたまネットで見つけて、わざわざアメリカからこんなところにまで来る。
自殺のために、ここを訪れた男が、同じようにここで死を覚悟した男と出会い、ふたりで樹海を彷徨う。死ぬはずだったのに、怪我をした男を助けることになる。マシュー・マコノヒー&渡辺謙がそんなふたりを演じる。
死の旅が、生きる旅に変わる時、同行していたはずの男は現実には存在しない男だったことを知る。すべては彼が見た幻影。実に単純な映画だ。登場人物もたった3人。彼らふたりと、回想に出てくるマシューの妻(ナオミ・ワッツ)だけ。(背景程度に登場する人物はいるけど)
こんなにもシンプルな映画を作るのは、なぜか。深い意味はないのだろうけど、ストレートにこの単純なお話を見せたかった。再生のドラマを作りたかった。きっと、ただそれだけのことだ。たぶん。