『トイストーリー３』

　こんなにも泣かされるなんて思いもしなかった。いや、たぶん泣くな、とは思っていた。前２作にも泣かされたのだから、絶対やられると思っていた。でも、それなりの覚悟は出来てるし、センチメンタルな味付けでは騙されたりしない。こっちはちゃんとした大人だからな！　なんて思いつつ劇場へ。

　でも、ダメだわ。ウッディーがあまりに純粋で、彼がアンディ－のことを信じて疑わないんだから、もうそれだけでこの映画を信用してしまう。人はいつか子供時代に別れを告げて大人にならなくてはならない。大学生になり、家を出ていくアンディーがどうしてもウッディーだけは連れていこうとした気持ちはよく解る。だが、人はいつの日にか、おもちゃたちときちんと別れて大人になるべきなのだ。映画はアンディーがあずかり知らないところで起きたおもちゃたちの冒険が描かれていく。そんな彼らの物語を通して、結果的にそのことに気づかされることとなる。実に上手い作り方だ。

　保育所の中でのドラマもよくできているし、そこからの命がけの脱出にもハラハラドキドキさせられる。おもちゃ目線の話と展開はこのシリーズの定番なのだが、その背後には「子供時代との訣別」という大きなテーマが基調低音として流れている。だから映画はこんなにも単純な話なのにそれだけでは終わらさない。これは文句なしに大人から子供までが楽しめる極上の娯楽映画である。