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映画・演劇のレビュー

『ホテルローヤル』『彼女は夢で踊る』

2020-12-17 21:52:15 | 映画

ラブホテルの映画とストリップ劇場の映画を、たまたま同じ日に見た。どちらの映画も、その場所が舞台になるという映画ではなく、その場所自体がなんと、主人公となる映画なのである。そのラブホテルがなぜ出来たのか。どんな経過をたどり、今に至ったか。そのストリップ劇場がどうしてできたのか、そして、今の時代にあってどういう風になっていくのか。

そして、どちらも最後にその場所がなくなる、というお話になる。性風俗を描くけど、どちらもエロ映画では当然ない。昔ならこんな映画は日活ロマンポルノとして作られたはずだ。一般映画でこういう素材を取り上げることはない。エロ映画にしなくては成り立たない題材だ。

そして、どちらもうら寂しい映画ではある。何かがなくなるのは寂しい。誕生から死までが描かれる。そのラブホテルがどうして、出来たのか。そのストリップ劇場がどんなふうに愛されたのか。

 

それぞれ、その支配人を主人公にして彼らがこの場所とどういうふうに向き合い、生きたのかが描かれていく。まるで、別々の映画なのに、連続して見た時、2本は双子の兄妹のようだ。表面的なストーリーではなく。描こうとするその根本的なところがとてもよく似ている。人間の本能と直結しているセックスを中心に据えて、生きることの意味を問いかける、そんな映画になっている、(ようにも、)思える。それにしてもなんだか不思議な取り合わせだ。

『彼女は夢で踊る』では加藤雅也がストリップ劇場の支配人を演じる。若かりし頃のエピソードを並行して描く。『ホテルローヤル』は波瑠が親から受け継いだラブホの社長を演じる。だが、彼らが主役ではない。群像劇であると同時にあくまでも、その建物と、記憶が主人公だ。人間は脇役でしかない。

 

傑作ではない。それどころか映画としてはどちらもあまり感心はしない出来だ。いろんなところで、失敗している。だけど、2本とも、とても気持ちのいい映画だ。あけすけにありのままに、いろんなことを語っている。感情過多にはならないのもいい。あくまでもドライな感覚でここを見守る。こういう小さな作品もたまには見るべきだ、と思った。

 

 

 


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