2020年の今を描く芝居を作る。コロナ禍の時代を背景にして、困難な時代をどう生き抜くのかを描く。とかいうような、芝居なら凄いのだけど、そうはならないし、そんな大胆なことを描くわけではない。でも、結果的にそういうことにもなっているのが面白い。
では、何が描かれるのかというと、ロンドンオリンピックが中止になった1944年、戦時下の動物園で、殺される動物たちが描かれる。そして、同時に東京オリンピックが延期された2020年、コロナ禍の現代が並行して描かれる。
戦時中、動物園の飼育員をしていた男が、戦禍の中、動物たちを殺さなくてはならなくなる、その苦悩を、約75年後の今、彼の曾孫が受け止める。1944年と2020年、ふたつの時代をひとつにつないでいく。同窓会に呼ばれたかっての仲間たち。小学校時代の同窓会に集められた大人になった彼ら。何の目的で、今、集められたのか。ひとりひとりの事情が描かれる。ひとりひとりがその理由を探る。そんな姿を通してやがて、たどりつく答え。
困難な時代にあって、それをどう生き抜いていくのか。ある種の普遍を描くのだが、それが戦時下とコロナ禍を背景にしたことで、見えてくる。昔話でしかない出来事を、今とつなげることで、今をあぶりだすのだ。直接コロナを描くのではないけど、困難な時代という共通項は明白で、芝居はそこが起点となっている。作、演出の久保田浩の優しさが身に沁みてくる佳作。