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映画・演劇のレビュー

『黄金時代』

2020-06-25 21:41:26 | 映画

2014年作品。東京国際映画祭や大阪アジアン映画祭で上映されたけど、劇場公開はされないまま、DVDにもならなかったから、今日まで見ることはかなわなかった作品だが、ネットフリックスで配信されていた。これはラッキーと、さっそく見ることにした。アン・ホイ監督作品。3時間の大作だ。だけど、なんだか乗れない。

淡々としたタッチで綴られていくドラマは起伏もない。主人公の作家、シャオ・ホン(蕭紅)が何を思い何を感じて時代を生きたのか。1910年代から30年代にかけて、ハルピンからスタートして、東京、武漢、西安、香港と、中国全土をさまよいながら、彼女が何を感じ、何を思うのかが、ちゃんと伝わればいいのだけど、なんかこれでは伝わらないのだ。

突然、カメラに向かって語る人々。友人たちによる証言がドキュメンタリーのようなタッチで、随所で挟み込まれる。でも、それが説明にはならない。映画は淡々と彼女たちの軌跡を追う。不親切だ。彼女がどんな女で何をしたのかも、これだけの描写では伝わりきらない。美しい風景を切り取り、日中戦争を背景にしながらも、戦乱の時代を描く大河ドラマにはならない。彼女のたどった31年の生涯、これはその時間を描く日常のスケッチなのだ。特別なドラマは用意しない。魯迅との交流や、恋人との別れ、彼女が書いた小説のこと、新しい恋人、そして死まで。伝記ドラマのはずなのに、彼女の人生の軌跡がドラマとしては伝わらない。わざとこういうスタイルを貫いたのかもしれない。

でも、これを見て僕たちは何を思えばいいのだろうか。よくわからないのだ。だから、最後まで乗れないまま、3時間を過ごした。もちろんこれは悪い映画ではない。この静かな映画はとてもいい雰囲気を保ち続ける。タン・ウエイも悪くはない。でも、いい映画だった、とは言い切れない。これでは何かが足りない。もどかしい。

 


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