とても真面目なお芝居で、作り手の誠実さは伝わってくる。いい意味でも悪い意味でも芳崎さんらしい芝居になっている。だが、あまりにストレートすぎて見ていて照れてしまう部分もある。それに、作者の意図が伝わりきらない部分もあり、演出面での表現力の欠如は否めない。
17年ぶりに大学のテニスサークルの同窓会を行う。しかし、ここに集まったのは3人だけ。しかも、案内のはがきの差出人は3人とも別人。なぜこの3人 . . . 本文を読む
次々に思いも寄らない発想で、映像の新世紀を切り開いていく園子温監督の現時点での到達点を示す傑作。(と、言っても彼の事だからすぐにこれすら超える映画を作り上げていくだろうが。現に今までのイメージを払拭する新鮮な青春映画『気球クラブ、その後』が来春に待機中)
90年に『自転車吐息』でデビュー以来、マイナーシーンで画期的な実験映画を作り続けてきたが、誰も知らない大傑作『うつしみ』から、内容と予算面 . . . 本文を読む
天願大介がこんなにもおとなしい普通の映画を撮るなんて、不思議だ。これなら商業映画として普通に通用する。というか、これは田中麗奈とチェン・ボーリン主演のスターを使ったアイドル映画と言っても別におかしくない。
しかし、ルックスはともかく映画自体は紛うことない天願映画になっており安心する。社会的弱者、障害者への暖かい視線と甘やかすのではない厳しさが、この映画にも貫かれている。
目の見えない女と . . . 本文を読む
見る前は、気が重かったが、仙頭武則が万田邦敏を監督に大抜擢したということに心惹かれて見る事にした。才能のある作家に危険を覚悟の上でこういう企画を任せることでいかなる結果を生むことになるのか。これはプロデューサーとしてはかなりの大冒険ではないか。
万田監督のキャリアとこの作品とのミスマッチが、もしかしたら、凄いものを生み出すことを期待して劇場に赴く。
今、神戸の震災を正面から扱った映画を撮 . . . 本文を読む
とてもいいタイトルだと思う。僕たちは日々、何を拠り所にして生きているのだろうか。よく分からない。何かを頼りに、頼りない毎日を生き続けていく。その日々のコンパスはどこにあるのか。そんなことを考えさせてくれる芝居でもある。
たよりない新米の役者たちがこの小さな芝居を演じていく。頼りとなるはずの台本は、どこを拠り所にしたらいいのか、よくわからないものだ。今の自分たちのように日々の不安を綴ったような . . . 本文を読む
人の夢の中に入って治療を施す装置を巡る物語。まだ、未完成なその装置を誰かが奪った。それを探し出すうちに、研究所の理事長の陰謀が発覚していく、なんていうお話自体は特別たいした事はない。
それよりも、夢の世界のビジュアル。イマジネーションの百花繚乱。カーニバルとグロテスク。あっと驚くスペクタクルの連続技。目も眩むような煌びやかな世界と、身も凍るような展開が、様々な人々の交錯する内面世界の具象とし . . . 本文を読む
市川昆監督による遺書は、なんと心優しい愛の物語であろうか。
齢90を越えてなお、第1線に立ち、現役で活躍し続ける文字通り日本映画界を代表する巨匠は、その輝かしいキャリアのたぶん最後を飾ることになってもおかしくない今回の最新作として、敢えて『犬神家の一族』を選んだ。これは、自身が30年前に作り上げたあの名作の完璧なリメイクである。
今から30年前、日本映画は瀕死の状態にあった。もう日本映画 . . . 本文を読む
『王の男』の感動から5分後にはもう、この映画を見ている。忙しいことだ。同じく韓国映画だが、こういうタイプのテクニックを駆使して、ソフィスティケートされた人間ドラマを作らせると韓国映画は、なぜかよく失敗する。もちろん韓国映画だからとは言わないが、今公開中の『サッドムービー』然りである。こういう群集劇は先日亡くなったロバート・アルトマンの得意とするところだが、若いミン・ギュドン監督はあまりに観客への . . . 本文を読む
二人の旅芸人の自由への逃避行が描かれる。自由を求めて、座長まで殺し、逃げ出してきたのに、気付けばまた、元の檻の中に入っている。宮廷に閉じ込められて、身動きがとれない。同じ事の繰り返しだ。どこに行っても本当の自由なんてものはない。
時の権力者である王のもとで、宮廷芸人として取り立てて貰うが、そんなことは幸福でも何でもない。豊かな食事を与えられても綺麗な衣服を与えられても、それが自由ではない。 . . . 本文を読む
75分という短めの芝居なのに、導入部分が長すぎて、いったい何の話なのかがなかなか分からない。なのに、結末部分はあまりに短かすぎて、あっけなく終わってしまう。
これって、芝居自身がうまく作れていたら見事な作劇術なのだ。よく分からないけど作品世界にぐいぐい引き込まれて行き、謎が解けると同時に一気にクライマックスに突入。あっという間に終わる、というパターンの傑作は多い。しかし、作者が思ったように作 . . . 本文を読む
ハン・ジェリム監督の第1作『恋愛の目的』は過激な映画である。一見何の変哲もないただのロマンチックなラブストーリーに見えるが、実は一筋縄ではいかない。バカバカしいラブコメの皮を被ったとても変態的で、居心地が悪い嫌な話だ。それを爽やか青春物のパッケージングを施して見せていく。
とても調子が良くて軽い高校教師が主人公(パク・ヘイル)。教育実習でやって来たキュートな女の子(『トンマッコルのようこそ』 . . . 本文を読む
前半は見ていて「なぜこんな話を映画にするのだろうか」という疑問が大きく、ちょっと退いてしまっていた。下手ではないけど、重いばかりで、暗い話を真面目に取り上げ、しかもお決まりのストーリーをなぞるだけ。かなりしんどかった。
しかし、普通の映画ならもうここで終わり、と思わせるところから、この映画は思いもかけない粘り腰を見せて、今まで映画やテレビが描かなかった地平へと、僕たちを連れて行ってくれる。
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キネマ旬報関西読者会から送られてきた今年公開された映画のリストを見てため息をつく。数えたら日本映画が279本。外国映画が497本もあった。よくもまぁ、こんなにたくさんの映画が(とりあえずは)スクリーンにかかったものだ。
関西未公開作は、まだまだあるし、劇場にかからず、DVD公開のみの映画はその数知れず、トータルすると1000本なんて軽く越えているはずだ。(2000本といわれても驚かない)
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なんとも不思議な気分にさせてくれる家族劇。ウエス・アンダーソン門下の新鋭ノア・バームバックのデビュー作。
1986年。ブルックリンを舞台に、作家夫婦の離婚から始まる兄と弟の受難劇。父を尊敬する16歳の兄とアルコール依存症になる12歳の弟。売れっ子作家の母と、かっての有名作家の父。4人の織り成す物語はとても刺激的だ。
何がこんなに面白いのか、よくわからない。自分の考えをしっかり持ち、それを . . . 本文を読む
正直言ってびっくりするくらい無内容な芝居である。作、演出のともさかけんさんはそんなことを充分承知した上で作っている。これは確信犯だ。この内容で90分を見せようとするのはとても危険なことである。観客が呆れてしまって途中で投げてしまう危険性もある。バカバカしくてもストーリーに乗せられラストまで見てしまうというタイプの芝居でもない。ストーリー自体がたわいなく無意味なのである。では、これは失敗作なのか? . . . 本文を読む