関西を代表する4人の劇作家が舞台で競演する。清水邦夫さんの名作『楽屋』に彼女たちが女優としてチャレンジする。演出はA級MissingLinkの土橋淳志さん。今年最後の期待の芝居だった。だが、確かに面白かったし、期待を裏切らない作品なのだか、なんだか物足りない。実に上手くキャスティングがなされてあるし、全体のバランスがいいから危うい部分もなんとかクリアしている。4人の中では唯一役者経験がない芳崎さ . . . 本文を読む
思いもしない展開に仰天した。戦争についての話であることはこのタイトルなのだから分かっていたが、単純に過去のお話を風化させないように語り継ごうとか、そんなことを坂手洋二さんがしたりはしないだろうとも、思ってはいたが、それにしてもこんな話だなんて想像もしなかった。意外というより、その発想の凄さに圧倒された。
戦後63年、あの第二次世界大戦から長い長い歳月が過ぎた。今では戦争体験を持つものよりも戦 . . . 本文を読む
日本の小説、マンガを原作にした韓国映画を2本続けて見た。残念だがどちらもあまり感心しない。
日本ではマンガの実写映画化は花盛りでが、それが韓国やアメリカにまで飛び火している。なんだか面映い。来年3月公開の『ドラゴンボール』には亀仙人の役でチョウ・ユンファが出演するらしい。驚きだ。だが、今年の『マッハGO!GO!GO!GO!』の映画化であるウォシャォスキー兄弟の『スピードレーサー』を見てもあれ . . . 本文を読む
働いていたハンバーガー店が潰れてしまい仕事を失った私(紀伊川淳)。舞台は大阪の南部にある安アパート。7畳半、一間の部屋。二段ベットを置いた部屋で男がふたりで暮らしている。同僚の疋田さん(亀川寿行)の趣味はプランターを置くこと。部屋の中はまるでジャングルのようになっている。部屋には二匹のやもりがいる。
ある日、日本を離れ遠い南の国(インドネシア)で暮らしているらしい兄から手紙が届く。お金の無心 . . . 本文を読む
ひきこもりの男が、自分の作った世界の外へと出て行こうとするお話。最初はしかたない状況からだが、彼は自分で自分の世界を壊し、ここから出て行く。
主人公の蔦彦(上田展壽)は自分の周囲の人たちと酷似した精巧なフィギュアを作り、その人形を自由に操り、自分の空想の世界に浸る。自分の分身であるライオンと2人で暮らしている。そこに両親の離婚から後、別に住んでいた姉と弟が両親の死によって、この家に戻ってくる . . . 本文を読む
死ぬほどつまらないだろう、と思いつつもついついこういうバカ映画は見てしまう自分が悲しい。2007年韓国で空前の大ヒットとなった超大作なのだが、当然日本では劇場公開は見送られるものと思っていたのに、なにをとち狂ったか、ロードショー公開されてしまった。めでたいことだ。
だが、当然客は入らないから、一瞬で公開は終わる。梅田のTOHOシネマズでもしたが、最初から1日2回上映で、2週目から1回に。気付 . . . 本文を読む
評判通りのとんでもない映画だった。噂があまりに酷すぎて、反対に弁護してあげたくなるくらいだ。気の毒すぎる。作者たちはまじめに一生懸命作っているのだから、からかわないであげて欲しい。水を使ったスペクタクルは凄いし、地下鉄構内のシーンや、SFXは見事だ。それに較べてお話のほうがあまりにお粗末。
全編突っ込み所満載の超剛球巨編である。どこから話をすればよいのか、悩む。何よりもまず、台風はいったいど . . . 本文を読む
アボルファズル・ジャリリ監督の新作である。キアロスタミと並んでイランを代表する作家である彼の作品ですらなかなか日本ではお目にかかれないという現実をいまさら嘆いてもしかたない。今回、この作品が日本で上映されたのは、製作に日本が参加しており、ヒロインを麻生久美子が演じているからにほかならない。
だが、作品自体は中途半端な合作映画ではなく、隅から隅までジャリリのテイストに貫かれた傑作である。シャム . . . 本文を読む
4番組のうち、僕が見た日は、2番組だけに上演だった。トイガーデン『もらる』とくらがり『しごじゅうしち、はち』。正直言ってどちらもあまりおもしろい作品ではない。だが、見終えて、とてもすがすがしい気分になれた。それはアクタートークで2作品の代表である安武剛さんと永原圭介さんの2人といっしょにほんの少しお話していても同じような感想を持った。
如月小春が好きだ、と語る安武さんは、好きだから彼女の作品 . . . 本文を読む
ある日、いきなり大親友が遠くの町に引っ越していくと言う。あしたは大事なピアノの発表会があるのに。2人で一緒に出るはずだったのに。納得のいかない彼女は、友だちが引っ越していった町にみんなを引き連れ、旅立つ。
太陽族の岩崎正裕さんがアイホールと共同制作する3部作の最終作品である。なんと今回は子どもたちのための音楽劇だ。この企画では毎回、普段の劇団では出来ない冒険を続けてきたが、今回の子どもミュー . . . 本文を読む
こういう小説をたまに読むとほっとする。400ページを超える大作なのだが、話はほとんど『となりのトトロ』だ。ばらばらになった家族が座敷わらしを通して再びひとつになっていく、なんていうカビが生えそうなお話なのだが、読んでいたら、いい気分にさせられる。
座敷わらしちゃんがとてもかわいいし、話の展開のゆるさがなかなかいい。田舎ののんびりした空気の中にしっぽりと浸っていられる。「希望と再生の物語」だな . . . 本文を読む
とても暗い映画だ。よくもまぁ、こんな題材にTV局(フジテレビが中心になっている)がお金を出したものだ。『踊る大捜査線』シリーズの脚本を書き、『容疑者 室井慎次』(これも暗い映画だった)を監督した君塚良一だからGOが出たのだろうがなかなか大胆な投資である。この手の映画がヒットするかはかなり難しい。宣伝も困難だ。だが、映画はとてもよく出来ている。こういう企画を見事に売り込めたならTVが製作する映画も . . . 本文を読む
交通事故に遭い、14歳の頃から20年間眠り続けた男が目覚める。34歳の体で14歳のままの心で。彼が失われた時間を取り戻すために、これからの時間を生きる。
簡単なことではない。この小説が描く復活の時間は、彼が20年後の今という時間に馴染んでいく過程を描くことではない。取り戻すことなんか出来ない現実を受け入れ、それでも過ぎていく34歳からの現実、失われた時間との桎梏の中、かっての親友、大好きだっ . . . 本文を読む
佐藤嗣麻子監督作品。彼女がこういうメジャー映画に起用されるだなんて、なんだかおもしろい時代がやってきたものだ。もともとは山崎貴にオファーが来た企画なのだろう。だが、彼が蹴ったことで(たぶん)どういう経緯かは、わからないが、彼女にチャンスが回って来たのだ!これだけの大予算のプロジェクトに怯むことなく自分らしさも織り込んで、もちろん観客のニーズにもしっかり応える娯楽大作として作り上げたその腕前は賞賛 . . . 本文を読む
今年一番見たかった映画だ。ようやく劇場公開された。ホ・ジノ監督の第4作である。僕にとって生涯の1本を選べと言われたなら、迷うことなく彼のデビュー作である『八月のクリスマス』をあげる。何度見たことだろう。初めて見たとき、ファーストシーンから涙が止まらなかった。おかしくなったのではないか、と心配したくらいだ。ハン・ソッキュ演じる中年男が死んでいく姿を淡々と描いただけの映画だ。お涙頂戴ではない。彼と若 . . . 本文を読む