ここまで絵空事のラブストーリーを見せられると、さすがに見ていてこそばゆいし、あまりに突っ込みどころ満載で、声も出ない。少女マンガの映画化作品は数あれど、一応、そこでは、そこそこのリアルも描かれてあるものなのに、この映画は徹底的にありえないことだらけで、これはまぁ、確信犯的行為だな、と思うしかない。
武井咲は先の『愛と誠』で、究極の嘘話を体現してくれているから、全く照れることなくこのフィクショ . . . 本文を読む
あみゅーず・とらいあんぐるvol.20 である。毎年コンスタンスに1本ずつ、休むことなく20年続けてきた条あけみさんと笠嶋千恵美さんのユニット。最初は川口ゆう子さんもいて、3人だったから、トライアングルだったのだが、2人になっても、新たなメンバーを、毎回お誘いして、基本的には3話からなるオムニバスを作品をベースに活動してきた。今年は20周年だから、なんと3作品の上演が為された。今回の前に2作品、 . . . 本文を読む
農業をテーマにして、過疎化が進み、老人だらけの場所となった僻地の村の復興をもくろむエンタメ小説。東京からほんのひと時、骨休みのつもりで、誰も住まなくなった田舎の家に帰ってきた男が、ここで自分たちの死とともに、終わりを迎えようとする村の再起を賭けて、老人たちと立ち上げるプロジェクトが描かれる。最初は、成り行きから、何となく始めてしまった限界集落の復活のための計画。だが、だんだん本気になっていく、と . . . 本文を読む
宣伝文句には『ESPエンタテインメント専門学校 卒業生から成り立つ パフォーマンス集団。合言葉は「む(じ)げんだいの可能性」』とある。なんだか楽しい。こういうキャッチフレーズをのびのびと付けて、自分たちの可能性を信じて、頑張る若い劇団を応援することが、きっと大事なことだと思うのだ。ウイングフィールドの若手応援企画ウイングカップ今年の3番手である。
正直言うと芝居は拙い。頑張っているけど、意及 . . . 本文を読む
この少しへんな人たちを巡る8つの短編連作の軽さは、これがあの傑作『しずかな日々』を書いた作家の作品とは信じられない。あまりのそのタッチの違いに驚く。まぁ、同じ作家だからいつも同じタッチでなくてはならないなんてことはないし、器用に様々なスタイルを使い分ける人ならいくらでもいる。でも、この椰月美智子さんはそんなタイプではないと、勝手に思い込んでいたから、ここまで驚くこととなる。
これはタイトルに . . . 本文を読む
今年もまた、ベストテンのシーズンになった。「キネマ旬報関西読者の会」から送られてきた封切り映画リストを見るのがいつも楽しみだ。そこには膨大な量の映画が記載されてある。これは関西で2011年12月から2012年11月までに封切られたほぼすべての作品のタイトルなのだが、僕も知らないような映画がたくさんある。いったいどこでこれだけの作品が密かに上映されてきたのか、とため息つく。特集上映は除いても日本映 . . . 本文を読む
いきなり始まって、ワンエピソードが終わったところで、「つづく」の文字が出る。そして、すぐに次回予告も入る。これは映画ではなく、TVそのものだ。90分の映画というスタイルで綴るTVシリーズの1編という位置づけであろう。明らかに確信犯的行為である。長編大河ドラマの1作(その第3作)ではなく、連続ドラマの1本。1話完結のエピソードという感じだ。
「序」は、TVシリーズのリニューアル。「破」は、オリ . . . 本文を読む
短編連作である原作のエピソードを一部カットして絞り込むのではなく、そのすべてを網羅していく構成を選んだため、まとまりが悪く、上映時間もこの手の映画としては異例の2時間22分という長編となるのは仕方がないことだろう。
原作は主人公が途中で変わっていくのだが、映画はそこまで明確なオムニバススタイルは取らず、トータルで1本の映画となるように、主人公を限定していく。あくまでもこの映画の主人公は高校生 . . . 本文を読む
山田孝之がひとり3役で、3つのまるで別々のお話の中で大暴れする。石橋義正監督の待望の新作である。この荒唐無稽な世界に放り込まれてそこで、想像もつかない冒険の旅に出る。鈴木清順監督も特別出演しているが、往年の彼の作品を見ているような驚きが満載である。極彩色の筆使いは、豪快だ。しかも、大胆極まりないお話とビジュアルで、あきれるやら、興奮するやら、何がなんだかわけがわからない。凄すぎる。バカすぎる。笑 . . . 本文を読む
東直子さんの小説デビュー作である。彼女はもともと歌人で、2006年にこの作品で作家デビューしたらしい。僕はその後の作品で彼女と出会い、その簡潔で、余白のたくさんある作品に心惹かれたにもかかわらず、今までさかのぼってこのデビュー作を読むことはなかった。不徳の次第である。彼女の魅力がここには全開している。というか、彼女の小説の秘密がここにはこんなにもあからさまに見える。やはり才能ある作家のデビュー作 . . . 本文を読む
もうお定まりとなったヒットしたTVドラマの映画化作品というパターンなのだが、これは西谷弘監督である。よくある安易な作品とは一味違うものになっている。だが2時間14分は少し長い。しかも、それだけの尺ですら、すべては語りきれていない。
終盤の展開はちょっとあれでは納得がいかない。最終的な解決がないのは、しかたのないことだが、あれで彼が去っていくだけではなんだか中途半端な印象を与える。もう少しなん . . . 本文を読む
幾分重い作品になった。きっとオリジナルはもっと軽妙で笑いのあるものなのではないか。息吹は持ち前のまじめさで、その軽さを棄てた。もちろん完全に棄てているのではない。台本をちゃんと踏襲してあるから、そのユーモアは残る。だが、そこを生かすのではなく、ここに描かれる時代にちゃんと寄り添おうとした。その結果、幾分重い作品になるのである。仕方のないことだ。
昭和21年という時代。戦争が終わった直後の混乱 . . . 本文を読む
役者は引退したはずのイーストウッドが4年振りで復帰した作品。やっぱり役者はやめられないのだろうか。これが特別な作品であるわけではないだけに、そう思うしかない。でも、彼には自分がやりたいと思える企画があればこれからもどんどんやってもらいたい。やっぱりイーストウッドはカッコイイ。こんなやわな映画に出ても許せる。というか、この突っ込みどころ満載の映画で、それでも泣かせるのは、このパターンでしかない安易 . . . 本文を読む
この芝居を語るのは難しい。どこからどう説明したらわかりやすいのか、よくわからない。というか、解説が困難な作品なのだ。それはお話が難しいというのではない。きちんと理路整然としてある気もする。だいたい岩崎さんはロジカルな人だから、安易な妄想や幻想なんかで逃げない。それだけに今回の作品は余計に混乱するのだ。正攻法でこれに挑んだ末、その混沌を引き受けることとなった。樋口さんは感性の人だから、気持ちの赴く . . . 本文を読む
小中和哉の『四月怪談』はとてもチープなSF映画だけども、本当に素敵な映画だった。まだデビューから時間の経っていない頃の、若かりし日の小中監督の野心作であり、代表作でもある。あれから何十年が経ったことだろうか。彼は今もこうして同じようにチープなSF映画を撮っている。その事実が嬉しくて、この誰も見にも行かないような映画を見る。そのためにわざわざ劇場へと行く。これは東映の「スーパーヒーローNEXT」と . . . 本文を読む