この恋愛小説はとてもいい。8歳年下の男の子を好きになってしまった女性の戸惑いと諦め。彼女の純粋な気持ちを、きちんと追いかけていき、そこに未来を提示する。
最初から諦めてしまうのではなく、きちんと向き合い答えを出していこうとすることで見えてくる未来がある、ということ。大切なものは、自分がどれだけ真剣で、将来のこととか、ではなく、今をどれだけ大切にしているかということなのだ、と教えてくれる。今、 . . . 本文を読む
『岸辺の旅』と『クリーピー』という2本の傑作の間に撮った作品だ。今、絶好調の黒沢清監督がフランスで撮った。もちろん、それはフランスロケという意味ではなく、「フランス映画」ということで、キャストもスタッフもそうで、これが純粋にフランス語で作られたフランス映画ということだ。もちろんそんなことは、今の彼にとって特別なことではなく、世界的な巨匠になった今、彼が海外でも映画を作ることは、当然のことなのかも、 . . . 本文を読む
最近毎年公開されるアトム・エゴヤンの新作だが、今回は子供の失踪といういつものパターンではない。なんと認知症の老人が主人公だ。昨年の傑作映画『100歳の華麗なる冒険』のようなファンタジー・タッチではない。ロードムービースタイルで、施設を抜け出した老人が旅をする話であるところは似ているけど、こちらはかなりハードな内容になっている。
しかし、決してそれだけではない。1週間前、妻を失くした90歳の老 . . . 本文を読む
先月末、TUTAYAで1ウィークで10本のDVDを借りて見た。さすがに吐きそうになった。その時に見た作品のことを書きたいのだが、時間がないまま、今に至る。なのに懲りないでまた今週5本もまとめて借りてしまった。でも、5本なので、なんとか見ることが出来た。いずれも面白い映画ばかりで、堪能した。
『マジマル・ガール』も『ロブスター』も変な映画で、それにこの映画と3本連続で「へんな映画祭」。(ちなみ . . . 本文を読む
ホテルの一室が舞台となる。彼女はひとりでこの世界にいる。明日は一人芝居の初日。彼女は女優。夜、一人の部屋で、最後の稽古をする。オスカー・ワイルドの『サロメ』を下敷きにしたオリジナル作品のようだ。
明日の本番で、人を殺す。詐欺師の青年だ。彼女は彼の犠牲になっている。共謀するのはこの芝居の台本を書いたライター。女優と作家、相反するふたりを加藤さんは対照的に演じる。それは光と影を思わせる。演じてい . . . 本文を読む
初めて見る。今回で第10回公演なのに、である。ずっと気にはなっていたけど、この過激な劇団名に怖れを為していたことわけではなく、見る機会がなかっただけ。ようやく願いが叶ってみることが出来てうれしい。
期待通りのはちゃめちゃさで納得。全くのナンセンス。ふざけている。でも、とてもスマートで、緊張感があり、楽しいエンタテインメント。ストーリーを追いかけていくわけではないが、そこで展開していくドラマは . . . 本文を読む
12年で干支がコンプリートした。記念すべき1作なのだが、魔人ハンターミツルギさんはまるでそういうことには頓着しない。いつものままの新作。そういう自然体が彼らしいし素敵だと思う。気がついたら12年。それでいい。夏のフライング記念公演(こちらがなぜか、先に来る、というのも、彼らしい)の後で、本作が「いつものように」1stで、上演されるのもいい。
今回はいつも以上にバカバカしい。お祭り騒ぎのバカバ . . . 本文を読む
北杜夫のユーモア小説を愛読していたのは、中学生の頃だ。遠藤周作の「狸里庵(こんな
字だったっけ)先生もの」とか、も。『どくとるマンボウ航海記』とか、夢中で読んだ、気がする。最初に読んだのは『船乗りクプクプの冒険』だ。(たぶん)もう40年くらい前の話なので、あまり覚えていないけど。でも、夢中で読んだ、ということだけは忘れてない。なのに、何を読んだのか、定かではない。なんだかなぁ、である。
今 . . . 本文を読む
なんだか凄い舞台美術だった。アイ・ホールに入って、すぐ、その圧倒的な空間に驚かされる。ダンボールで作られた様々なオブジェ。空に浮かぶ雲。外灯。自販機。監視カメラ。タイヤ。TV。街頭カラオケのステージ。そのサイドにはちゃんとスピーカーもある。背景には、アベノハルカスの威容。地面には圧倒的な量の「新聞紙」が敷き詰められる。さらには舞台全体を「囲い」が覆う。劇場全体を使って作り込んだ空間。そんな舞台美術 . . . 本文を読む
こんなタイトルだけど、もちろんホラー映画ではない。トム・ハンクス主演のミステリー映画。というよりも、『ダ・ヴィンチ・コード』、『天使と悪魔』に続くロバート・ラングドン教授シリーズの最新作。今回の題材はダンテ。『神曲』の地獄篇の挿絵となったボッティテェリの『地獄の見取り図』から始まる。
人類が死滅する細菌を拡散させようとする狂信者から世界を救え、というようなお話。なんだか、嘘くさいし、スケール . . . 本文を読む
ウシジマの過去が描かれる。カウカウファイナンスに突然訪れた中学の頃の友だち。ウシジマの原点となる中学時代のエピソードと今とを対比させて、あの頃に決着をつける戦いがクライマックスに用意される。ファイナルにふさわしいドラマとなる。
今回2本撮りで作られた「3」とこの「ファイナル」の撮影順序が、まずファイナルを撮った後、3に繋げたという話をどこかで聞き、なるほどと納得。ここまでの集大成として力が籠 . . . 本文を読む