前半はなかなかいいのだけど、最後の第5話がつまらない。お話をどこに落とし込むかが腕の見せ所になるのだろうけど、どうしてこんなふうに説明だけの収め方をしたのだろうか。これではなんだか興醒めだ。
この不思議な館で、過ごす時間は心地よい。下宿人は変な人たちだらけ、というよくあるパターン。これはある種のファンタジーなのだけど、これがこんなにも気持ちよく読めるのは、作者がまず嘘と割り切ってこの虚構世界を楽 . . . 本文を読む
『恋ポテ』シリーズの番外編だ。あの3部作の背後の世界でもさまざまな恋愛ドラマが展開されているという当たり前のことをちゃんと短編連作のスタイルで見せてくれる。ファンには堪えられない作品だろう。5つのエピソードは主人公をタスキ(バトンでもいいけど)で繋いで行きつつ、最後のゴールにたどり着く。タイトルにあるように駅のホームを舞台にしながら、リレー形式でお話を収める。
想いは微妙に食い違う。だから、恋は . . . 本文を読む
前半は素晴らしい。この小説は2部構成で、2つの中編小説が収められる。ふたつでひとつだ。ふたりの主人公のそれぞれの側面から同じ時間(20数年に及ぶ)を描いていくのだが、護の目からふたりの歴史を描く『フラット』と、後半、徹子の目から描く『レリーフ』のあまりの違いに戸惑うばかりだ。まるで別の小説を読んでいる気分になる。そして、いろんな謎が解き明かされていく『レリーフ』はつまらない。
『フラット』がおも . . . 本文を読む
答えが欲しいのか。違う。でも、不安でどうしたらいいのか、わからない。兄の道は、たぶん発達障害で(医者には見てもらっていないから、そういう診断はされてはいない)考えるのはまず自分のことだけで、周囲のことが見えない。というか、見ていない。5つ年下の妹、羽衣子は、そんな彼に終始イライラさせられている。マイペースで自分の道を行く彼と、自分に自信がが持てず、自分には何もないから、と思う彼女。空堀商店街にある . . . 本文を読む
前田哲監督が『そして、バトンは渡された』の前に作った作品で、コロナのために公開が延期されていたがようやく公開された。前田監督作品が全国一斉公開で、しかもかなり大きなチェーンでの29日、30日と2日連続での公開となった。僕が見た大阪ステーションシティシネマでは、一番キャパの大きな1番スクリーンで『そして、バトンは渡された』が上映され、並んで2番スクリーンではこの映画が上映されていた。しかも、平日の午 . . . 本文を読む
13年間姿をくらまし行方知らずだった父親の葬式の場面から始まる。余命わずかで帰ってきて、数か月後に死んでいった。どうしようもない父親。そんな彼に接したふたりの息子と妻。借金だらけで、家計は火の車。借金取りがやってきて居留守を使う。そんな日々だった。13年後、大人になった兄弟は父を受け入れるのか。妻であった母はどうするのか。冒頭の葬儀のシーンの侘しさ。参列者はほとんどいない。身内は兄弟と弟の恋人だけ . . . 本文を読む
アマゾンプライムで配信されているオリジナルドラマである。こんな作品があったなんて知らなかった。先週発見して見始めたのだが、衝撃的な(園子温だから、そんなのはいつものことなのだが)冒頭のエピソードに唖然とさせられる。相変わらずの惨劇で血まみれになるのだが、中川翔子が凄すぎた。
園子温監督、2017年の作品だ。精力的に新作映画を連打してきた彼がここ数年劇場映画から遠ざかっていたのは、この配信用のオリ . . . 本文を読む
直木賞を受賞した前作『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』の続編が早々に書かれて刊行されていた。今回は短編連作のスタイルで、主人公は6つのエピソードで変わっていくのだが、読み終えたときの感触は、長編を読んだ気分だし、これは確かに長編小説である。
今回の実質主人公は、近松半二の娘である。だが、そのおきみは最後まで主人公として登場することなく、脇役に甘んじるのだ。最後の最後でやっと彼女がお話のセンターに立つ . . . 本文を読む