モノクロ、ドキュメンタリータッチ。A24制作。いろんな意味でそそられる映画だ。今回マイク・ミルズ監督が、ホアキン・フェニックスを主演にして描くのは、幼い甥っ子(9歳)を預けられた男のロードムービー。
まず冒頭のインタビューマイクを向けられる子供たちの言葉が胸に突き刺さる。彼らの生の声は今を生きる子供たちの心情を生々しく吐露する。それはエンドクレジットが流れるラストでも繰り返される。さまざまな子供 . . . 本文を読む
今年もまた東京バンドワゴンが帰ってきた。なんと18年になる。毎年確実に新刊が出てほっとさせてくれる。堀田家の面々は元気だ。毎年1年ずつ歳をとる。当たり前だけど、それがうれしい。1年を1年として描く小説なんて他にないだろう。スピンオフを挟むからまだ15年くらいだろうか。
まぁ細かいことはどうでもいい。今回も小さな事件が満載する4章仕立てである。
あまりに登場人物が多すぎて交通整理 . . . 本文を読む
白石和彌監督が初プロデュースを手がけ、この作品で高橋正弥が本格監督デビューした。こんな地味な企画が通り、これだけの豪華キャストで映画化されるのは奇跡だろう。白石よりも年長の高橋は落ち着いた演出で主人公の水道局員の狂気に至る過程を見せる。納得のいく結末だ。『TAR ター』の狂気とは次元が違うけど、同じように日常から自然に、ある狂気へとつながる。これは彼らにとって破局ではなく、当然の結末なのだ。幾分甘 . . . 本文を読む
先日公開の『ロストケア』で気を吐いた前田哲監督怒濤の新作ラッシュ第2弾。この後すぐに『大名倒産』も控えている。いずれもまるで違うテイストの映画だ。シリアスな社会派映画、今回は切ない恋愛映画。次回はコメディ時代劇。いずれも単純な括りでは説明できない不可能でボーダレスな内容を軽やかに描いた。前田監督はあらゆるジャンルの作品を手掛ける。もう自由自在な域に達する。今回は昨年沖田修一監督が映画化した傑作『子 . . . 本文を読む
彩性まるのデビュー作『花に眩む』を最後に収録した最新短編集。表題作は植物と人の融合したような存在を描く不思議なお話。以前にも彼女のこんな話の長編を読んでいる。タイトルは忘れたけど。いずれも幻想的な恋愛物語。グロテスクで気味が悪いと思うような設定すらさらりと受け止められる。それから12年ほど経つ今、近作5篇と合わせて収録した。今回の短編集はすべて同じような作品が並ぶ。人と人以外の「もの」との恋物語だ . . . 本文を読む
『いのちの停車場』の続編。もちろん今回はコロナ禍の医療現場のドラマになる。前作は吉永小百合主演で映画化された小説。今回は吉永演じた白石先生は脇にまわって松坂桃李演じた看護師が医師になってお話の主人公になる。(映画にはまだなってないけど)
短編連作スタイルでコロナ禍の訪問看護を背景にしていくつもの患者との交流を描く。どのエピソードも心当たりがある。自分の体験と重ね合わせて読んでしまう。娘に迷惑をか . . . 本文を読む
これは食を巡るエッセイ集。一年の出来事を順に書いてある。卯月から始めて弥生まで、毎月ふたつずつのエピソードが披露される。最初は「なんだか専門的過ぎて(いろんな知らない食材とか、ね)わかりません」というのがたくさん出てきて、無理かも、と思ったけど、大丈夫だった。おいしい話は伝わる。お話を伝えるのではなく、おいしいを伝える。
梅干しの話が心に沁みる。自分にも心当たりがあり、なんだかいろんなことを考え . . . 本文を読む
「芸術は、心のごちそうですね」音楽と料理。最初のエピソードで魅了された。お腹を満たすこと。心を満たすこと。ふたつが同時になったとき、最高の瞬間が生まれる。6つのエピソードは6つのおいしい料理。ビストロ「つくし」は移動レストラン。期間限定で現れる幻のようなキッチン。サーカスのテント、イルミネーションに導かれて、席に座ると、まさかの極上のおもてなしに遭う。あなただけのスペシャリテ。
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是枝裕和監督の最新作。(今回もまた)カンヌ映画祭で話題になった作品。坂元裕二が脚本賞を受賞した。映画は凄い緊張感の持続でスタートする。一体何が起きたのか、怒濤の展開が押し寄せる。小学校での教師による生徒への暴力。保護者が学校に担任を訴えに行くのだが、校長以下教員たちはただ謝るばかりで何ら適切な対応をしてくれない。問題の担任教師はヘラヘラしているばかりで何の解決もしないまま。こんなことがあり得るのか . . . 本文を読む
窪美澄の短編集。これはある診療内科に通う人たちの抱える物語。窪美澄なのに甘いし優しい。いつもキツい話ばかりという印象があるからなんだか意外だった。短編連作というスタイルも珍しい。ひとつひとつの話が書き込みが淡い。余白がたくさんあるし、結論も曖昧。この先どうなるかなんてわからないから。でもきっとなんとかなる。そう信じられる。これはそんなお話。心を病んでしまったら、ここに来ればいい。さおり先生と旬先生 . . . 本文を読む
こんな映画がちゃんと劇場公開されていたのか、と感心する。地味すぎて知らなかったけど、大阪でも公開されていたんだろうか、後で調べてみよう。たまたまAmazonで見つけた。ジャームッシュの映画を思わせる懐かしいモノクロ。固定カメラ。風景描写。でも、描かれる内容は、なんだかよくわからない。説明なし。最近こういう映画ばかり見ている気がするけど、たまたまなのか、流行りなのか。
母親と娘。のんびり万引きした . . . 本文を読む
これはよくある少女漫画の映画化。「ラブコメの名手・中原アヤによる恋愛コミック」の映画化らしい。僕は知らないけど、どこかのアイドルとモデルの女の子(「HiHi Jets」というグループの井上瑞稀と久間田琳加)が主演。吉田恵里香が脚本を担当し『胸が鳴るのは君のせい』の高橋洋人が監督した。高橋監督の前作はイマイチだったが、今回はなかなかいい。ベタな展開を受けて堂々と見せてくれるのがいい。平凡なルックスの . . . 本文を読む
監督・脚本はこれが長編デビューとなるスコットランド出身のシャーロット・ウェルズ。ドラマらしいドラマはない。ただ、記憶に残るあの日の出来事を思い出して綴る。それだけ。一昨日見た『なぎさ』もそうだったが、これもあまりに独りよがりだ。説明過多はまずいが、これでは不親切。観客に頼り過ぎ。ある程度のヒントは必要だ。上手く観客を誘導してそこで考えさせてくれる映画でないとよくない。匙加減はかなり微妙で難しいけど . . . 本文を読む