アイルランドのキャンプ旅行から帰ってすぐ、今冬はスペイン、ポルトガルで越冬しようと決めた。
今年の夏は日本の猛暑と正反対で、8月に夏らしい天気がなかった。英国生活38年にもなる私にとって、今だ8月は汗をかく位の暑さがほしい。
夏の来ないままに、10月末の冬時間がやってくるのは耐え難い。一番最低なのは冬時間と同時に夜の来るのが早くなり、天気の悪い日には夜明けが8 時過ぎ、夕暮れは3時過ぎになってしまう。
11月5日のフェリーでポーツマスからスペイン北部のサンタンデルへ行くことにした。
11月4日ポーツマスに一番近いキャンプ場に一泊した。設備の整った大変きれいなキャンプ場で、11月にもかかわらず、キャンパーがぎっしりと駐 車していた。こんな時期にこんなにたくさんの車、皆この辺りで越冬するのかしら。 ポーツマスから出たフェリーにはたった5台の キャンパーが積み込まれただけ。
サンタンデルは今から20数年前にフランスを通ってキャンプ旅行に行ったことがあった。その頃セカンダリースクール(中学、高校にあたる)に入っ て一年目の娘が、習いはじめたばかりのスペイン語で、私のマーケットでの買い物に通訳として十分役立ってくれ、感心したものだ。
その時にサンタンデルのどこのキャンプ場に泊まったかなど、全然覚えていないが、唯一つ忘れられない思い出がある。
キャンパーを停めた港の堤防にたくさんの釣り人が立っていた。一体何が釣れるのかと近寄ってみてびっくり仰天。 処理されていない真っ黒の下水の 水が噴出しているところに、大きさ2-30センチの魚が群れになって泳いでいて、それを釣って、彼らはどうするのか?あの後、しばらく魚が気持ち 悪く て食べられなかった。
ポーツマスからサンタンデルまで24時間もかかる。そして世界でも有名な荒海ビスケイ湾を渡ってゆく。今まで何度も船酔いで苦しめられたわが身 は、乗船と同時にベッドに釘付け、24時間の長ーい時間を耐えに耐えた。
私を気の毒に思った海の神様ポセイドンがいたかどうかは知らないが、この夜は意外なほど海が凪いで、昔は海の男だった亭主が驚いていた。
薄日の差す穏やかな朝、フェリーから眺めるサンタンデルの町は美しい。町外れに建つ白い宮殿、いくつも宮殿風に見えるホテルや、周辺の岡の上まで びっしりと立ち並ぶ高層住宅、金曜日の早朝からセーリングしている人々。フェリーを降りるとすぐこの町を出るのにあせりまくって、やっぱり道に 迷って,郊外26kmのキャンプ場に落ちついたのはまだ午後早い時間だった。