Altamira
サンテジャーナ・デル・マルの村から帰った夜は激しい雨が降り続いた。翌朝真っ暗な空と横殴りの雨の中、次のコミージャスへ向かう前に村から2kmはなれた岡の上にあるアルタミーラ博物館へ行こうと亭主が言った。
雨の降りしきる日曜日の朝というのに、駐車場はたくさんの車で埋まっている。ここが世界に有名な洞窟だとは博物館へ入るまで知らなかった。
このモダンな博物館は2001年にオープンして、世界中から観光客が集まってくるという。
日曜日は入場無料で11時5分の整理券をもらって入場した。 ”その時間まで館内を見てください。5分前にここへきてください”と指示を受け、館内に展示された石器時代の生活や世界中に点在する壁画などの写真を見て回った。
整理券で受付前に集まった20人くらいの人たちと、壁だと思っていた大きなドアの中に送り込まれ、洞窟の成り立ちや、発見されたいきさつを映画でみた。
次の通路は直接洞窟につながっていて、考古学者が掘り起こした骨だらけの床や、一部に設置されたスクリーンで石器時代の人々が火をおこしたり、動物の皮をはいだりしているのが見える。
洞窟の奥深い岩天井にいろいろな姿のバイソンや馬の絵が描かれている。想像したよりも大きく、そして線画に黒と茶色で彩色された絵を見ていたら涙腺が緩んでしまった。数年前ノルウエーとスエーデンで氷河で磨かれた岩の上に線で描いた動物や、人々、船などの絵を見たが、単純な線だけで、これほどすばらしい技術をもった現代にも通用しそうな絵は見たことがない。1万6千500年前にも天才画家がいたのだと思う。スペインにピカソやダリが生まれたのが判るようなきがする。
これを見て、きっとピカソはここへ来たに違いないと確信した。
今日インターネットで調べてみたら、やっぱりピカソはこの洞窟に言及していて、”アルタミーラ以降の絵画は皆堕落だ ”と。
この洞窟は現在ユネスコに指定されている。1879年にアマチュアの考古学者と彼の9歳の娘によって発見されたこの洞窟は、世界中に旋風を巻き起こした。当時このような高等な手法で描かれた石器時代壁画はなかったから、誰にも信じがたいことだったらしい。
1902年に初めて認められて、以来多くの訪問者によって洞窟内が損傷され、長い間閉鎖されていた。2001年この博物館がオープンして、私が見てきた洞窟はコピーだという。
コピーでもあれだけ感激したのだもの、来てよかった。
博物館内は撮影禁止でこのブログに写真を載せることが出来ない。帰国したときに、この博物館で買った絵葉書をスキャンして載せることにしよう。
博物館から16km西にあるコミージャスへ向かった。通り過ぎてゆく村に立派なきれいな教会があり、併設された大きな建物は一体なんであろうか。