浜田省吾が1986年に発表した曲 に「J.BOY」という歌がある。
言わずと知れた、彼の代表曲である。
その中に、こんな歌詞がある。
“J.BOY 頼りなく豊かなこの国に
J.BOY 何を賭け 何を夢見よう”
1986年以降、浜田省吾はこの歌をライブで歌い続けてきた。
それは、数多の楽曲の中でもオーディエンスの人気が高く、
ライブで大いに盛り上がるからだ。
では、なぜそんなに盛り上がるのか?
それは彼を支持するオーディエンスたちが、この歌に共感
しているからに他ならない。
もっと簡単に言えば、歌詞に“リアリティ”があるからだ。
・・・話が逸れはじめたので、軌道修正する(笑)
では、今の時代、この歌詞に“リアリティ”はあるだろうか?
残念だけど、僕は、首を横に振る。
24年間、僕もこの歌に共感してきたオーディエンスの一人だが、
ついにこの歌も、時代とズレはじめた感がある。
豊かなこの国?
賭ける?
夢を見る?
・・・この歌が発表された当時は、バブル景気へと一直線だった頃だ。
この歌の中の“豊か”という意味は、そういったかりそめの豊かさへの
皮肉を込めた表現であることは確かだ。
しかし今の時代、バブル自体がとうの昔に歴史の一部となり、その残像の
ような“かりそめの豊さ”さえも危うくなってしまった。
ここで歌われている“何を賭け、何を夢見よう”という肯定的な動詞も、
かりそめであっても“豊か”という土台があっての代物だ。
その土台が崩れかけているのに、賭けも夢もあったもんじゃない。
皮肉だ。
皮肉なことに、今も昔も変わらないのは、最初の“頼りなく”だけだ。
先日、この国の総理大臣が、普天間基地の問題解決のために、都内で
病気療養中の病人と会談した。
その御仁は、基地問題でにわかに注目されている徳之島に絶大な影響力が
ある人なのだそうだ。
この御仁は、以前から知っていた。
病院経営で財を成し、国会議員にまでなった。
しかし、この御仁が徳之島出身とは知らなかった。
最近、まったくメディアに現れないと思っていたら、病気療養中だったのか。
それも知らなかった。
今回の一件で、すべて知った。
それもこれも、総理大臣が日中堂々と病院へ会談に行ったから。
当事者である徳之島の町長たちや住民と会うことよりも、徳之島に影響力が
あるという御仁に会うことを優先させたから。
アホか。
本当に、そう思った。
会うこと自体にそう思ったのではない。
それどころか、このテの会談は必要だと思う。
何事にも・・・特に大きな問題の解決には“根回し”が必要だ。
そのためには、手が汚れてしまうこともあるだろうし、
裏で動かなければいけないこともあるだろう。
そう。裏で動くのだ。普通は。
こういう会談は、裏で、こっそりと、誰にも気づかれないようにやるべきなのだ。
それが“根回し”というものだし、徳之島の町長をはじめ、住民たちへのマナーと
いうものだろう。
それなのに、この国の総理大臣は・・・ (-_-;)
真っ昼間に、記者たちが放列する中で会談に向かってどうする?
あまりにも、稚拙すぎる。
あらためて、痛感した。
小さい頃から恵まれて育った人間には、やっぱり決定的に欠落している部分があるのだ。
別に難しいものではない。珍しいものでもない。
普通の人なら、誰でも持っているものだ。
それは、客観的視点だ。
もっと易しい言葉で表現するならば、思いやり、だ。
裕福な家庭に生まれ、幼少から受け身で育った人間は、相手の立場になって考える、
という道徳の基本的部分を養われないまま、成長してしまうのかもしれない。
人間という生き物を作り上げる時、肉眼では見えない内側のどこかの大事なネジが、
2~3個付け忘れられたのかも知れない。
そんなふうにさえ、思えてしまう。
しかし、見方によってはそういう人間はとても優しく、人当たりもいい。
なんせ、荒波に飲み込まれることもなく、おだやかに育てられたのだから。
たまに思うことがある。
こんな人が近所や親戚にいたら、本当にいいおじさんとして接することが
できただろう、と。
しかし残念ながら、彼は近所のおじさんでもなく、親戚のおじさんでもない。
日本国の第93代内閣総理大臣だ。
もう遅いのかも知れないが、彼はその器ではなかったのかもしれない。
なんせ、“自分は愚かな総理・・・”と自虐的発言をしてしまうくらいなのだから。
カネモチの坊ちゃんは、逆境に弱いのが常道である。
国会の場でそれを自ら露呈したようなものだ。
写真は、クルマで通りがかったとある小屋の写真。
今にも倒壊しそうな古い掘っ建て小屋に、政党のポスターが
与党も野党もごちゃ混ぜのまま、まるで風俗のテレフォンビラのように
無秩序に貼られている。
あまりにも貼り方が汚すぎて、誰が何を訴えたいのか、さっぱり見えてこない。
そのうち、長年の風雨にさらされ、腐食してボロボロの掘っ建て小屋が、
新しいポスターを貼る前に倒壊してしまうかもしれない。
まるで、今の日本そのものじゃないか。