りきる徒然草。

のんびり。ゆっくり。
「なるようになるさ」で生きてる男の徒然日記。

Iターン。

2010-10-29 | Weblog
数週間前、知人から薦められて、読んだ。

「Iターン」福澤徹三。

面白い。しかも、とてつもなく。

理由は2つ。
ひとつは、主人公が中堅の広告代理店の営業マンだということ。
僕も中小企業の広告代理店のデザイナーだ。
彼の身に起こる出来事や行動が、身に沁みるほど分かる。
校正とかマックとか版下とか、文章に散りばめられた
専門用語に思わずのけ反りそうになる(笑)

そしてもうひとつは、その文章表現。
この小説は、基本的にコメディ小説だ・・・と思う。
しかし、文章のどこにも、さも笑わそうとする表現がない。
でも、笑ってしまう。
プロの方を相手に大変失礼だが、ものすごい高度な文章力だと思った。

ストーリーの詳細を書くわけにはいかないので割愛するが、
簡単に書けば、主人公の広告代理店のサラリーマンが、なぜか一所懸命
仕事を進めれば進めるほど、ヤクザとつながりが強くなっていく・・・という
荒唐無稽だけど、さもありそうなストーリーなのだが、この話の進み方が
面白すぎるのである。

福澤氏は、本来はハードボイルド小説や怪談小説が得意な作家さんだ。
だから、“そのテ”の話はお手のものなのだろう。とにかくリアルなのだ。
広告代理店のサラリーマンが、ヤクザ社会のアリ地獄にハマっていく様子に、
まったく違和感を感じないのである。
そして、上述したようにさも笑わそうとしない文章なのに笑わせるその技術は、
きっと、上述したようなジャンルの小説で培われた、太くてタフな文章表現力が
あっての賜物なのだろうと思う。

思い知らされた。
僕もアマチュアながら稚拙なコメディ小説を書いたことがあるが、格が違いすぎる。

たとえば僕の小説は、いわば結成間もない若手芸人のコントのような笑いだ。
つまり、読者は、笑うツボを薄々感ずきながら笑ってくれる。
しかし福澤氏の小説は、いわばベテラン俳優が呟くダジャレのような笑いだ。
例えば、高倉健が突然あの口調で“布団がふっとんだ・・・”と呟いたら
どうだろう?きっと、みんな、声を殺して笑ってしまうのではないだろうか?

・・・・う~~ん、上手く表現できないなぁ。

でもとにかく、いい小説だった。
何よりも“ちくしょう、俺だって”と向上心の炎を燃やしてくれたことが
一番の収穫。
薦めてくれた知人に感謝。こんな素晴らしい作品を執筆された福澤氏に感謝。
そして、他人に薦められた本はあまりよまないくせに、今回は珍しく最後まで
読破した自分に拍手(笑)
コメント (8)
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