ライトノベルセレクト№105
『夏のおわり・4』
直接的な表現じゃないけど、あたしは結果的に「うんこ」を五回も連発していた!
お婆ちゃんが、今時珍しいカセットテープに放送の半分ほどを録音していた。他に電車の中で英単語覚えたことも、その理由と共にしゃべっていた。で、学校名こそ伏せられていたけど(学校の名前のとこは、ピーって音になってた)学校のあれこれ喋りまくり。こりゃ、明日からひきこもりと落ち込んで、晩ご飯にも出られなかった。
「いいじゃないの、あれは聞く人に力を与える話だったわよ」
お風呂から上がると、やっぱりお腹が空くので、晩ご飯の残り食べていたら、お婆ちゃんが、テレビ見ながら言った。
「こんなに、無理に笑ってるバラエティー番組より、よっぽどよかったじゃない。あの話……話しもそうだけど、夏のしゃべり方って、人の心を和ませるよ。うん、素質かもしれないわね!?」
「ゲホゲホ、ゲホッ! あれが!?」
あたしは冷や奴にむせながら、お婆ちゃんの誉め言葉を聞いた。お婆ちゃんは、うそは言わない。感情を顕わにすることなんかないけども、いつも落ち着いて、本当の話をしてくれる。
お母さんは悪い母じゃないけど、その場の感情でしゃべったり、グチったり、文句言ったり。で、当然そこには、誇張やら、軽いウソが混じることがある。小さい頃は引っ込み思案で、言いたいことの半分も言えない子だったので、喋ったときには大いに喜んでやるようにして、お婆ちゃんはお母さんを育てたのだそうである。
お母さんは、そうやって、それなりにイッッパシの婦人(お婆ちゃんが好きな言葉)になったのだそうだ。
ただ、世の中は完ぺきに行くことは少なく、イッパシの女子高生、イッパシの女子大生、イッパシの作家になって、あたしを育ててくれて、ありがたいんだけど、あたしにはお父さんがいない。
最初っからいない。
いわゆるシングルマザーである。
お父さんが居ないことで特に寂しいと感じたことはない。友だちの中にも何人かそういうのがいる。
「そういうのもアリ!」
たまに、そう言う話になると、たいていお婆ちゃんが、そう締めくくる。
『ごめんね、今日は騙したみたいで~』
「みたいじゃなく、騙したのコイトは!」
いつ教えたのか、コイトは、あたしのアドレス知ってて、スマホをかけてきた。
『レギュラーが、急にアウトになっちゃって、ダメモトでディレクターに言ったら、イザってときはあたしが責任取るってことでOKくれたのよ』
「でも、騙した!」
『だから、それはゴメン。でもさ、ナッチャン、スゴイ反響だよ。放送局にいっぱいメールやら、お便りきてるから、あとで転送しとくね。で、またお座敷かかったら、よろしく!』
「もう掛けてこないで!」
切った後、直ぐにコイトのメールが来た。添付で、リスナーのメールがコピーされて転送されてきた。
で、不覚にも、そのいくつかにホロッとしてしまった。
――ナッチャンありがとう。こんな女子高生もあり! 二学期は学校行く気になりました――
――あたしも、ワケありで父なるものがいませんが、勇気もらいました!――
――ナッチャンのおかげで、リスカ用のカッターナイフ捨てちゃった!――
――ナッチャンみたいな子が、友だちにいたらなあ! ハミーゴより――
バスタオルで、涙拭いていたら、お婆ちゃんが横にやってきた。
「ね、やっぱり夏は、いいことやったのよ。これは、まだ収まらないね……」
そう言って、自分の昔話をし始めた……。
で、明くる日、学校に行くと、加藤と雅美が、怖い顔していた。
「今さら、昔のあだ名の話なんかするなよな!」
「夏が、あんなに口の軽い子だとは思わなかったわ!」
「え、なんのこと?」
あたしは、八重桜の昔話(第一話)もしてしまったようだった……。
「で、だーれ、八重桜の二人組は!?」
コイトが、教壇で聞いた。
4時間目のホ-ムルームに、渋谷が珍しくニコニコ顔で入ってきたかと思うと、その後からスタッフを引き連れてコイトが、フワフワのモテカワ系のコスであらわれた。で、トーゼン教室は歓声に包まれた。
で、さっきの質問になったわけ。
あー、親友二人の反応がコワイよー!